■「欧州全土からバイヤーを呼び込む」

 迷路のような通りに並ぶ家族経営の店。家族たちのルーツのほとんどは、古くから世界各地への移民が多い中国・浙江(Zhejiang)省の温州(Wenzhou)だ。ボーデ市長によれば、2000年頃に最初の中国人卸売業者たちがビジネスを始めてから、オーベルビリエの問屋街は雪だるま式に大きくなっていった。ミンさんのような作業員や従業員を除いても、今や約1200人の中国人取引業者がいる。

 オーベルビリエはフランスと中国を結ぶ商業の中心地になった。「フランス語を話す中国系フランス人のような、新しい世代のビジネスマンも増えている。店で働く店員たちでは、中国人以外も雇われるようになっている。これは新しい状況で、市にとっても住民にとっても興味深い」

 パリ周辺の中国人コミュニティーに関する専門家リシャール・ベラハ(Richard Beraha)氏によると、その何年か前からフランスに来ていた中国人の最初の世代は当初、何の公的文書も持っていなかったが、仕事を見つけて合法的に滞在できる資格を得た。そして徐々に稼ぎを増やし、卸売業へと進出していった。

 そんなパイオニアの一人、シュエシェン・ワン(Hsueh Sheng Wang)さんは一大アパレル帝国を築き、40代後半で巨大な富を持ち「オーベルビリエのキング」と呼ばれるようになった。ワンさんを含む中国系投資家8人が、新ファッションセンターに出資している。欧州最大の繊維卸売市場となる同センターは、オーベルビリエの中心部に建てられ、広さ5万5000平方メートルの敷地に310店舗が入る。

 欧州全土からバイヤーを呼び込み、取引を1か所に集中させることによって繊維製品の輸出入の効率性を高めることが同センターの目的だとワンさんはいう。フランス経済にも恩恵をもたらすとワンさんはみている。(c)AFP/Francois BECKER and Valentin BONTEMPS