【5月25日 AFP】今年3月、鯨肉に認知症の予防効果があるとする研究論文が日本人の科学者らによって発表されたが、このニュースが報じられると「科学的ではない」と異議を唱える声が各方面から上がった──。

 鯨をめぐる研究に関しては、いくら関係者が「学術的な厳密さを満たしている」と主張したとしても、「捕鯨」や「調査」といった言葉に諸外国から寄せられる反応は「信頼性の欠如」に他ならないのが現状だ。

 日本政府は、過去20年間近くにわたって南極海(Southern Ocean)での「調査捕鯨」を行ってきたが、国際司法裁判所(ICJ)は昨年、調査捕鯨について「商業捕鯨の隠れみの」との判断を下した。

 調査捕鯨にまつわる問題について、東北大学(Tohoku University)東北アジア研究センターの石井敦(Atsushi Ishii)准教授は、「全ての科学者が調査として当然クリアすべき基本的なポイントがクリアされていない」と指摘する。

 さらに「例えば捕獲枠の算出方法の説明をしておらず、査読つき論文もほとんどない」としながら、「科学研究は、これだけ大規模になると、効率的かつ重複がないようにするためにも、他の研究プロジェクトと協力してやろうとするものだが、それも一切しようとしない」と付け加えた。

■研究は政治的なのか?

 今年3月、鯨肉に含まれるバレニンという成分に認知症の予防と改善に効果があるとの研究結果が発表された。研究結果は日本人の科学者らがマウスを使った実験で明らかにしたものだが、国際環境保護団体「グリーンピース(Greenpeace)」の佐藤潤一(Junichi Sato)氏は、この種の研究に対しては常に疑いの目を向ける必要があると注意を促した。

 しかし、この論文を発表した星薬科大学の塩田清二(Seiji Shioda)特任教授はAFPの取材に「何をもってして本当の科学でないというのか分からない」としながら、研究が政治色を強く帯びているとの指摘に反論。「科学的なデータに基づいて、意味のある物質が(鯨肉に)あるのは確実だと考えている」と続けた。

 また、鯨は長寿を誇る生き物で、老年期でも位置をしっかりと認識して回遊することができるとしながら、「鯨はすばらしい生き物だが、(彼らの持つ)メカニズムについてはあまり分かっていない。それは(ある程度捕獲して、臓器を分析し)科学的に分析しないと分からないのです」と説明している。

 一方、調査捕鯨について東北大学の石井准教授は、国際捕鯨委員会(International Whaling CommissionIWC)による商業捕鯨のモラトリアム(一時停止)が皮肉にも捕鯨の「延命」に寄与したと話す。捕鯨をめぐっては、1990年代~2006年頃までに、もはや商業的に成り立たない状況となっており、日本は「モラトリアムがないと調査捕鯨を続けられなかった」のだという。

 石井准教授によると、南極海での調査捕鯨は毎回赤字なので、本音を言えば水産庁も撤退したいはずだという。それでも捕鯨を推進する政治家たちが、「(環境保護団体の)シーシェパード(Sea Shepherd Conservation SocietySS)に屈服することになる」「オーストラリアに従うことになる」として反対しているのだと説明した。(c)AFP/Huw GRIFFITH