【5月21日 AFP】ナイジェリアで35歳の夫を毒殺したとして逮捕・起訴された当時14歳の少女について、同国の検察当局は20日、起訴取り下げを裁判所に申請した。

 検察側は、ワシラ・タシウ(Wasila Tasi'u)被告(15)に対する「起訴を取り下げ」「過失殺人罪での訴訟を終結させる」よう、北部カノ(Kano)州ジェサワ(Gezawa)の高等裁判所に申請したことを明らかにした。裁判所は、書面または口頭による起訴取り下げ表明を6月9日に行うよう検察に命じ、その後で起訴取り下げを認めるかどうかを判断するという。

 同州の複数の司法関係筋がAFPに語ったところによると、この事件をめぐっては人権活動家らが非難の声を上げており、ナイジェリア政府に起訴取り下げを求める圧力がかかっていたという。

 事件は2014年4月5日、カノ州の小さな村、ウングワルヤンソロ(Unguwar Yansoro)で起きた。被害者のマル・サニ(Umar Sani)さんは自宅でタシウ被告との結婚を祝う会を催していたが、検察によると、タシウ被告が振る舞った殺鼠(さっそ)剤入りの料理を食べた数時間後に招待客ら3人とともに死亡したとされる。

 この事件は、ナイジェリア北部で今も広く行われている児童婚の習慣をめぐり、国内でも考え方に大きな隔たりがあることを浮き彫りにした。タシウ被告の出身地でイスラム教徒の多い北部では、14歳は女性の初婚年齢として一般的だとして、被告が21歳離れた夫と強制結婚させられたとの見方を否定する声が強かった。

 サニさんの家族だけでなく、タシウ被告の両親も、被告は複数の求婚者の中から自分でサニさんを夫に選び、親しい友人たちに結婚を望んでいると話していたと説明。村の住民からは、結婚に不満を感じた他の少女たちが被告と同じ行動に出ることのないよう被告に厳罰を下すべきだとの訴えも聞かれた。

 検察当局によると、タシウ被告が釈放された場合は、カノ首長(Emir of Kano)でナイジェリアで2番目に高位のイスラム教聖職者、ムハンマド・サヌシ2世(Muhammad Sanusi II)が「避難場所」を提供すると申し出ている。サヌシ2世は欧米式の教育を受けた元ナイジェリア中央銀行総裁で、多くの国民から進歩的な指導者と評価されている。(c)AFP/Aminu ABUBAKAR