買い物は至難の業、供給不足のセントヘレナ島
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【4月24日 AFP】初代フランス皇帝ナポレオン(Napoleon Bonaparte)幽閉の地として知られる南太西洋の火山島、英属領セントヘレナでは、日常の買い物が一仕事だ。食料品店の棚に毎日何があるかは、その日になってみないと分からない。
「ソ連に住んでいるみたいだよ」とフランス人旅行者のフランソワ・アフネルさんはいう。「最初の店でバター、次の店でレモン、3番目の店でクリームがやっとそろうといった具合だ。葉物野菜や卵は毎日はないね。魚が入るのは午後1時、パンは昼までには入る。けれど午後5時には店は閉まってしまうんだ」。空腹を満たすためには、買い物計画をしっかり立てないといけない。「全部がそろっている店はないから、買い物の時間もかかるね」
旅行者とは違い、セントヘレナの住民4200人は買い物について、それほど焦っていない。現実に身を委ねてあきらめていると言えるのかもしれない。南アフリカのケープタウン(Cape Town)からの船便が3週間に1度しか来ない島では、選択肢があることはぜいたくなのだ。
中心都市のジェームズタウン(Jamestow)での買い物には、多少の柔軟性と船便のスケジュールに関する知識が必要だ。「何かにこだわって探さないほうがいい」というのは、島で昆虫の研究をしている英国人のデービッド・プライスさんだ。「店は毎日まわったほうがいいし、何かを見かけたら即、買っておくべきだ」
島で4店舗のコンビニエンスストアを家族経営するタラ・トーマスさんによれば、入荷があると大量買いが起きるという。「ボトル入り飲料水が入ると買い占めが起き、そのせいでまた品薄になる」。品物のほとんどは英国か南アフリカからやって来る。島で生産している物は少なく、わずかな生産物も住民同士の間で物々交換されるか、店頭に並ぶ前にホテルやレストランにまわされてしまう。
供給不足に目をつけ、小規模農業を立ち上げる動きもある。39歳のジョシュア・マーチンさんは、トマトとキュウリの温室栽培を始めた。そこそこ成功はしているが、生産者同士の調整がないため、「皆、同じ物を作ってしまう」と嘆く。それに専業でないために生産が安定しない農家も多い。
これほど供給が不足している中、来年2月には南ア・ヨハネスブルク(Johannesburg)との間で週1便の旅客機の運航が始まる。観光客が流入すれば対応できないだろうと、店の経営者たちは心配している。(c)AFP/Jean LIOU