■失業率低下、なのに購買力も低下

 労働党と党首のトニー・ブレア(Tony Blair)氏を政権の座に導いた1997年の総選挙で「ウースターの女性」は鍵となる票田とされた。しかし、それ以後は保守党が議席を取り返し、5月の総選挙でも議席の維持に向けて激戦を繰り広げている。

 政権奪還を目指す労働党の大物政治家キャロライン・フリント(Caroline Flint)氏は、かつて「ウースターの女性」と呼ばれた層は今でいえば、格安スーパーを利用する「アルディの母さん」といったところだと話す。AFPの取材に対しフリント氏は「経済状況のせいで、この層は買い物の仕方を変える必要性に迫られている。有権者が自分たちにとって何が重要かを考えれば、収入がどうなるかが、どう投票するかに直結する」と話す。

 専門家らは、保守・自民連立政権下で、一世帯当たりの購買力は低下したと指摘する。オックスフォード大学(Oxford University)経済学教授のサイモン・レンルイス(Simon Wren-Lewis)氏は「過去5年またはそれ以上にわたる実質賃金の減少は、英国で前代未聞」だと指摘し、景気の回復も「非常に弱い」と話す。失業率は13年以降、急激に低下したが、新たに生み出された雇用の大部分では賃金が非常に低く、格差はここ数年で急速に拡大しているとレンルイス氏はいう。

 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)が行った07年~13年の期間の調査によれば、ロンドン(London)では上位10%の富裕層が不況以前から25%資産を増加させたが、下位10%の最貧困層の収入は10%減少している。

 今回の総選挙を前に、保守党は購買力強化のための課税最低額引き上げを公約に掲げ、一方で労働党は電力およびガス料金の10%引き下げを年内に実施するとしている。

 英調査会社イプソス・モリ(Ipsos Mori)を率いるギデオン・スキナー(Gideon Skinner)氏は「経済政策に関する信頼性の全体的な水準において、保守党は明らかにリードしている。だが同時に人々は生活費を心配し、景気全体の動きがどの程度、自分たちに及ぶのか、あるいは及ばないのか、非常に気にかけている」と述べた。(c)AFP/Patrice NOVOTNY