【3月20日 AFP】東京で1995年に起きた地下鉄サリン事件から20日で20年。専門家らは、この凶悪事件の動機について、答えよりも疑問の方が多く残されたままだと指摘している。

 1995年3月20日、通勤ラッシュの地下鉄車内に猛毒のサリンがまかれ、13人が死亡、6000人以上が負傷した。これまで、オウム真理教(Aum Supreme Truth)の教祖、麻原彰晃(Shoko Asahara)死刑囚を含め13人に死刑判決が言い渡されたが、この衝撃的な事件の背景にあった動機については、いまだにはっきりとは解明されていない。

 特に不可解なのは、オウム真理教が起こした凶悪事件に関与した信徒たちが、一流大学卒の科学者や医者などエリート層だったことだ。立正大学(Rissho University)の西田公昭(Kimiaki Nishida)教授は裁判について、「オウムを解釈し実態を明らかにし、被告の罪を裁くだけでなく、日本が世界にテロリズムに対して有用な情報を出す機会だった」と話す。

 また西田教授は、日本人2人を人質に取り殺害した「イスラム国(Islamic StateIS)」などのイスラム過激派組織の台頭により、国際社会が対策に追われるなか、サリン事件の詳しい経緯と背景を正確に理解することがこれまで以上に重要になっていると話した。

「世界を見ると、『イスラム国』の問題があり、私から見ると似たような若者が取り込まれている」「自分を大事にしてくれる所を探して、必要とされ、褒められ、役に立ちたいと思っている」

 18日にはチュニジアの博物館を武装集団が襲撃し、日本人3人を含む外国人観光客20人が殺害される事件が起きた。西田教授は、人々がなぜ過激派組織にひかれていくのかを知ることがますます重要になっていると指摘。「彼ら(オウム真理教の信者ら)は被害者に悪意を持っていたのではなく、むしろ善意を持って殺人や障害を与えることをしてしまった」「命令は絶対的な存在のグル(教祖)、間違えがない人を超えた存在(が出した)。その人に自分からとやかく言うのがおかしい」と述べた。

 サリン事件をめぐる裁判が終結し、死刑が執行されれば、一見すると普通の人間がなぜ、過激な行動に駆り立てられるのか、日本はそれを説明する機会を失うことになる。

「果たして、そういう裁判がなされてきたか。十分に彼らの心を理解したのか」(西田教授)

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