【3月9日 AFP】2012年にインドの首都ニューデリー(New Delhi)で女子学生が複数の男に性的暴行を受け死亡した事件のドキュメンタリー番組の放送が禁止されたことに抗議し、インドのニュース専門チャンネルNDTVは8日夜、放送が予定されていた時間帯に1時間にわたって放送を中止し、静止画を映した。

 NDTVでは「国際女性デー(International Women's Day)」の8日、午後9~10時に、英国放送協会(BBC)が制作した、2012年12月にニューデリーでバスに乗っていた女子学生(当時23歳)が6人の男に性的暴行を受け死亡した事件に関するドキュメンタリー番組「India's Daughter(インドの娘)」を放送する予定だった。

 放送禁止措置について同局では公式コメントは発表していないが、編集ディレクターのソニア・シン(Sonia Singh)氏が今回の抗議に先立ち、マイクロブログのツイッター(Twitter)に「私たちは叫ぶつもりではない、聞いてほしいのだ」と書き込んでいた。

 このドキュメンタリー番組には犯人の1人で、強姦(ごうかん)と殺人罪で死刑判決を受けたムケシュ・シン(Mukesh Singh)死刑囚のインタビューが含まれていた。インド当局は今月3日、公衆の怒りをあおる恐れがあるとして番組の放送を禁じる裁判所命令を獲得していた。

 このインタビューの中でシン死刑囚は「まともな女性なら夜には出歩かない」などと、被害者に責任転嫁する発言をしている。シン死刑囚の発言について、ラジナート・シン(Rajnath Singh)内相は「女性の尊厳を傷つける、極めて軽視した発言」だと強く批判した。

 放送禁止に対する抗議はインド全土に広がり、多くの人々はNDTVの対応に賛同している。また被害者女性の父親は、インドの女性たちに向けられる態度の「辛い現実」を示しているこのドキュメンタリーを全員が見るべきだと述べた。(c)AFP