【2月18日 AFP】ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐の独裁政権が崩壊してから混迷状態が続くリビアは、イスラム教スンニ派(Sunni)の過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」にとって勢力拡大に格好の拠点となっており、同組織掃討のための軍事介入を国際社会に求める声が高まっている。

 ISは15日、リビアで拘束していたキリスト教徒のエジプト人21人を斬首したとする映像をネット上で公開した。敵対勢力に恐怖を与えるとともに、支配地域をイラクやシリア以外にも広げていることを示す狙いがあるとみられる。

 ISはこの3週間前、リビアの首都トリポリ(Tripoli)の高級ホテルが標的となり外国人5人を含む9人が死亡した襲撃事件で犯行声明を出し、欧米を標的とした新たな戦線をリビアに開いていた。

 エジプトは自国民の殺害映像が公開された翌日の16日、報復措置としてリビア国内のIS拠点を空爆。さらに17日には、国際社会に対し、国連(UN)の支持を受けた上でリビアに介入するよう要請した。

 だがリビアでは、2011年のカダフィ政権崩壊後にイスラム武装組織が勢力を強めており、政府は、それぞれ異なった動機やイデオロギーを持つ多数の武装組織の封じ込めに苦心している。

 かつてないほどの政情不安が続くリビアで抗争を繰り広げる主要武装組織は2つある。1つは、国際的に認められたリビアの暫定政府の後ろ盾を持つハリファ・ハフタル(Khalifa Haftar)退役将校が率い、東部からのイスラム戦闘員掃討を目指す勢力。もう1つは、昨年夏に西部の都市ミスラタ(Misrata)から出現し、首都を掌握して独自の政府と議会を設置したイスラム武装組織連合「ファジル・リビア(Fajr Libya、リビアの夜明け)」だ。

 過激派組織の活動に詳しいローマン・カイエ(Romain Caillet)氏は、ISによるエジプト人殺害の目的について、「(ISの)リビア支部は勢力を拡大しており、イラクやシリア以外の支配地域で最も強力なものとなっている」ことを示すことにあったと分析する。

 リビアにおけるIS台頭で、東と西の国境を接するエジプトやチュニジア、そして国際社会の介入が必要だと主張している南のニジェールやチャドを含む周辺諸国は懸念を高めている。