【2月9日 AFP】エジプト当局は9日、首都カイロ(Cairo)のサッカー場で前日起きたサッカーファンと警察による衝突での死者数を19人へと下方修正し、また犠牲者の中に警察によって殺害された者はいないと発表した。

 死者が出たのは8日、エジプト・プレミアリーグ、アル・ザマレク(Zamalek)対エンピ(Enppi)の試合が行われたスタジアムで、当局はファン数千人が殺到したと説明している。

 エジプトでは2012年にポートサイド(Port Said)のスタジアムで起きた暴動で、同国サッカー史上最悪の70人以上が死亡して以降、国内チーム同士の試合の大半で一般入場が制限されているが、8日の試合は一般入場が可能になっていた。ただし内務省は観客数を1万人と限定し、チケット数は発売後すぐに完売した。同日は、チケットを持っていなかったファン数千人がどうにか試合を見ようとスタジアムの壁をよじ登り始めた。

 警察がこの群衆を排除しようとして催涙ガスと小型のペレット弾を発射したところ、パニックが生じたという。保健当局と警察は、犠牲者は全員、将棋倒しで押しつぶされて亡くなったと発表している。

 内務省のハニ・アブデル・ラティフ(Hani Abdel Latif)報道官は、検察当局が先に発表していた死者数22人を、19人に訂正した。また18人が逮捕され、警官22人が負傷したと述べた。

 救急サービス当局のハレド・ハティブ(Khaled al-Khatib)氏は、死者数は正しいとし「将棋倒しで死者が発生した。銃弾や小型ペレット弾で撃たれた形跡はない。遺体には多くのあざがあり、首が骨折している者もいた。互いに下敷きになったもようだ」と語った。

 この衝突発生にもかかわらず、この日の試合は続行されたため、ファンの間には怒りが広がっている。首相府の声明によると、政府はこの事態を受け、エジプト・プレミアリーグの試合開催の無期限中止を決定した。

 政府は、衝突を始めたのはサッカーファンだと非難している。検察当局は発表した声明で、ファンたちがスタジアムへ通じる道を封鎖し、警察車両3台に放火したとし、今回の衝突に関する捜査を命じた。

 警察や目撃者は、催涙ガスや小型ペレット弾を発射した警察に対し、ザマレクのサポーターたちが花火で応酬したと語っている。また「すごく狭い場所に密集していたファンに警察が催涙ガスを発射した。みんな逃げようとして他人の上に乗るような格好になった」という目撃談もある。

 今回死者が発生したことで、近年警察との衝突を繰り返し、数千人規模で抗議行動を行っている同国のサッカーファンが再び激怒する恐れがある。

 エジプトのサッカーファンは、長年強権支配を続けたホスニ・ムバラク(Hosni Mubarak)元大統領を追放した11年の「エジプト革命」で主要な役割を果たし、今も混乱する同国の中で爆発しやすい勢力であり続けている。(c)AFP