【2月6日 AFP】イスラム教スンニ派(Sunni)の過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」は、過去のイスラム過激派の運動の失敗に学んでシリアとイラクに堅固な支持基盤を築き、世界中の多くのスンニ派教徒へ向けて大々的にアピールしている──このように分析し警告する新著が今月、米国で発売される。

ISIS: Inside the Army of Terror」(ISIS:テロの軍隊の内幕)の著者らは、イスラム国の戦闘員や構成員数十人と話し、イスラム国の何が魅力なのか、また数々の残忍な戦術をどのように正当化しているのかを聞いた。

 著者の1人で、AFPの電話取材に応じたシリア生まれのジャーナリスト、ハッサン・ハッサン(Hassan Hassan)氏によると、イスラム国が掲げる宗教的信条の中には幅広い層のイスラム教徒に共有されているものも幾つかあり、それを理解することが肝心だという。

「イスラム国は、自らをイスラム教の終末思想に基づく運動と位置付け、この世の終わり、カリフ(預言者ムハンマドの後継者)による統治の復活、カリフ制国家による世界征服を唱えている。こうした教義は、異端どころか主流そのもので、中東を中心に世界中のモスクで説かれている」。アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ(Abu Dhabi)在住でシンクタンク研究員でもあるハッサン氏はこう指摘し、イスラム国はこれらの教義を取り込んで、より注目を集めるようさまざまな戦略を展開していると述べた。

■訓練キャンプの内情

 ハッサン氏が共著者の米ジャーナリスト、マイケル・ワイス(Michael Weiss)氏と行った研究は、これまであまり知られていなかったイスラム国の訓練キャンプの内情についても明らかにしている。

 新規参加者は、軍事的・政治的・宗教的な訓練を受ける。訓練期間は2週間~1年と人によって異なる。敵の侵入を防ぐための対情報活動の訓練も行われているという。

 訓練終了後も新規参加者は監視下に置かれ、少しでも躊躇(ちゅうちょ)を見せれば組織から追放されるか、処罰の対象となる。「信仰を鍛え直す」として再び訓練キャンプ送りになる場合もあるという。

 イスラム国は、特定の教本や組織内に所属する聖職者を利用して、自らの暴力行為を宗教的に正当化している。中でも「The Management of Savagery(野蛮の作法)」と題された指南書では、残虐行為は欧米をあおって過剰反応させる有効な方法だと説いて説いている。