■安倍首相の「積極的平和主義」の影響は

 安倍首相は「積極的平和主義」を打ち出し、憲法が自衛隊に課している制約の緩和に向けて動いている他、友好国、特にオーストラリアやインドといった地域大国と防衛・経済面でより緊密な関係を築くべく積極的な外交を行っており、第2次世界大戦(World War II)後の米軍による占領を経て国際社会で抑制的に振る舞ってきた日本を「普通の国」にしようとしている。

 しかし、放送大学の高橋教授は、安倍首相が表明した2億ドル(約237億円)の支援策は日本政府の行動としては多くの点で典型的なものである上、日本にとって不可欠な中東諸国との関係強化を図るという側面もあると指摘し、安倍首相の積極的な外交姿勢が日本と日本人が過激派に狙われる危険を高めたという推論に走らないようくぎを刺した。

 高橋教授は、エネルギー資源の乏しい日本は大産油地帯である中東との関係を維持しなければならず、中国が中東への影響力を強めようとしている現状ではなおさらそうだと述べ、人質の殺害予告を受けた当面の危機にあっては長年の資金援助などを通じて良好な関係を作り上げてきたトルコなどの中東の友好国に協力を求める必要があると述べた。

 高橋教授は、今回の中東歴訪を外交上の大きな見せ場にしようとしていた安倍首相に冷や水を浴びせたと述べた。しかし帝京大の志方教授は、日本はテロリズムと戦う姿勢を示す以外に選択肢はなく、過激派に屈して身代金を払うことは──少なくともオープンな形では──できないと述べた。(c)AFP/Hiroshi HIYAMA