【1月20日 AFP】イエメンの首都サヌア(Sanaa)で19日、イスラム教シーア派(Shiite)系の民兵が政府軍と衝突し、少なくとも9人が死亡した。民兵は大統領宮殿付近にある軍の基地を制圧し、国営メディアを占拠。さらにハリド・バハーハ(Khalid Bahah)首相の車列を銃撃した後、自身の公邸に逃れた同首相を包囲した。

 政府の報道官がAFPに明かしたところによると、昨年10月の首相就任以来バハーハ氏が居住している公邸の出入り口全3か所を、重武装した民兵が占拠している。これを受けて同報道官は、暴力行為を終結させるための「行程表」を策定するため、「緊急会合」の開催を呼び掛けた。

 この民兵らはシーア派の一派のザイド派(Zaidi)に属する武装勢力で、「フーシ(Huthis)」や「アンサルラ(Ansarullah)」と呼ばれている。

 保健副大臣によると、この日の襲撃で、政府軍とフーシ合わせて少なくとも9人が死亡し、民間人を含む67人が負傷した。また情報相は、フーシが国営のサバ(Saba)通信とテレビ局を占拠し「政府の声明を伝えることを拒否している」とツイッター(Twitter)で発表した。

 フーシと政府軍の間では、数時間後に停戦が発効した。ある治安当局者の話によると、国防相と内相がフーシの代表と協議して停戦に合意した。停戦の発効は内務省も確認している他、大統領宮殿周辺の住民らも、戦闘は終わったようだと話している。この停戦合意を維持していくため、後に政府とフーシの合同委員会が設置された。

 サウジアラビアと国境を接し、ペルシャ湾(the Gulf)を経由する主要な運輸ルート上に位置する戦略上重要なイエメンは、フーシが昨年9月にサヌアを掌握して以降、政情不安に見舞われている。民兵らは先週末にアブドラボ・マンスール・ハディ(Abdrabuh Mansur Hadi)大統領の側近1人を誘拐するなど、サヌアでの勢力を強めているとみられ、ハディ大統領は就任以来最大の危機に直面している。

 またこの日の襲撃事件を受け、米国が展開する国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)との闘いで鍵となる同盟関係にあるハディ政権が崩壊し、イエメンの国家そのものがソマリアのように破綻するのではないかという懸念も広がっている。(c)AFP/Jamal al-Jabiri