【1月6日 AFP】フランス・パリ(Paris)近郊のシャンプラン(Champlan)で埋葬が拒否されたと伝えられたロマ人の赤ちゃんの亡きがらが5日、同市から数キロ離れたビスー(Wissous)で、近親者らに見守られながらようやく埋葬された。

 生後約2か月半で死亡したロマ人の赤ちゃんの亡きがらの埋葬が拒否されたと伝えられた今回の問題は大きな人種差別論争に発展していた。

 赤ちゃんの葬儀には、ロマ人団体の代表者らを含め約100人が参列。赤ちゃんの小さな白いひつぎは、パリ南郊ビスーの墓地に埋葬された。

 赤ちゃんの遺族に対し、一家が住んでいるシャンプラン市当局は埋葬区画の割り当てを拒否し、また同市のクリスチャン・ルクレール(Christian Leclerc)市長は、納税者が優先されるべきと発言したとされ、同国メディアが一斉に報じた。同市長は一貫してこれを否定、発言が曲解されたと主張し続けている。

 フランス全土には怒りの声が広がり、マニュエル・バルス(Manuel Valls)首相までもが赤ちゃんの埋葬拒否をフランスに対する侮辱と非難する事態になると、市長は親族に哀悼の意を表し、シャンプラン内での埋葬を許可すると伝えたが、家族らはこの申し出を断った。

 ロマ人の支援団体ASEFRRの関係者は、母親は赤ちゃんが死亡したことで「心を引き裂かれる思いをしている」として、「彼女には市長に対して何か言おうという気はない。ただ理解に苦しんでいるだけだ」と明かした。

 しかし世論は口をつぐんではいなかった。ルクレール市長は人種差別者と非難され、主に東欧から移住してきているロマ人とフランス社会とのあつれきが改めて議論の的となった。

 祖先はインド出身とされるロマ人は、長く人種差別の対象となり、軽犯罪に手を染めていると疑われることも多い。欧州連合(EU)は、現在欧州全域に1000万~1200万人のロマ人がいると推定しており、同域で最も数の多い少数派と認識されている。(c)AFP/Clement ZAMPA