【5月13日 AFP】タイトで色鮮やかなドレスにハイヒール姿の若者たちが、スペイン初の「ミス・ロマ」目指して一列に並ぶ──ここは、少数派ロマ人女性の権利向上を目的とした新しいミスコンの予選会場だ。

 ミス&ミスター・ロマを決めるコンテストの第一次予選が行われた先週、首都マドリード(Madrid)にはロマ人の若者たちが集まった。

 参加者の一人、リベルタードさん(17)は「モデルになりたい」と審査の結果を待つ間に将来の抱負を語った。リベルタードさんの母親は、「コンテストはロマの若者にチャンスを与えるもの。私たちの世代が手に入れることのできなかったようなチャンスを」とコメントした。

 マドリードのホテルで行われた予選では、各参加者の写真撮影が行われた他、名前や学歴、それぞれ興味のあることや将来の夢などが審査員らに伝えられた。

 主催者である北フラメンコ協会のマリア・ヒメネス(Maria Jimenez)さんは、ロマ人の女性に独立心をもってもらうことがコンテストの目的と述べる。「ロマ人女性の多くは、14歳か15歳で結婚し、子どもを産むことを考えている。私は彼女たちにもっと勉強して独立してほしい。夫に頼らなくてもすむように」

 コンテストの審査員には、ファッション業界やショービジネスの世界で活躍する、非ロマ人の5人が選ばれた。参加者らには、外見だけではなく内面的な魅力や知性も求められた。

■ロマンチックなイメージとは裏腹なロマ人の生活

 フラメンコを歌い踊るスペインのロマ人の伝統文化には、ロマンチックなイメージが描かれがちだが、彼らの置かれた環境は決して恵まれたものではない。

 ロマ人の人権擁護団体「ヒターノ事務局(Secretariado Gitano)」の2011年までの調査によると、スペインのロマ人の約半数は16歳になる前に学校を中退している。また人口約72万5000人のロマ人の失業率は極めて高く、2011年の時点では36%に上っていた。スペイン全体でも26%と高い失業率だったが、それを大きく上回った。

 そのため、10月6日に予定されている決勝ラウンドを目指す参加者やその家族たちにとって、同コンテストは遊びではなく将来のチャンスをつかむための真剣な戦いでもある。

 ロマ人はもともと遊牧民で、その祖先は何世紀も前にインドから渡ってきた。第2次世界大戦(World War II)中には、ナチス・ドイツ(Nazi)に虐殺された歴史もあり、長く差別に苦しんできた。しかし差別は今も続いており、軽犯罪の増加をロマ人の責任だと非難する国もある。(c)AFP