【12月23日 AFP】アルゼンチンで先週、より望ましい居住環境で暮らすために動物園から出る権利が裁判所によって認められ、一躍有名となったオランウータンの「サンドラ(Sandra)」は22日、飼育場の周りに集まった大勢の報道陣にも平然とした様子で、メロンを食べたりその皮を頭に乗せたりしてカメラの前で愛嬌を振りまいた。

 同国の裁判所によってサンドラは先週、オランウータンとして世界で初めて、人間が持つ基本的権利の一部を享受する資格を認められ、ブエノスアイレス動物園(Buenos Aires Zoo)での過去20年にわたる飼育は「不当な監禁状態」に当たると判断された。

 しかし、動物園側は裁判所の判決に困惑している。動物園の主任生物学者アドリアン・セステロ(Adrian Sestelo)氏は「サンドラは過去20年間、こうやって暮らしてきた。(飼育場の)空間は広いし、専門家が栄養に気を付け、健康管理をしている。概して彼女は非常にいい環境で生活している」と語った。

 それでも同国の動物の権利のための法律専門家団体「AFADA」は、サンドラは考えや感覚、権利を持つ「非人間」だとして「不当な監禁状態」に対する法的救済措置として「人身」保護令状を請求した。

 1986年にドイツの動物園で生まれたサンドラがアルゼンチンに来たのは94年。園では内気な性格で知られ、人目に付かない場所に隠れることが多い。これについて動物愛護運動家らは抑うつの兆候だと主張しているが、セステロ氏はAFPに対し、「そうした意見はオランウータンという種の基本的な生態について無知である証拠。オランウータンは単独行動で生きている。習性は非常にリラックスしていておとなしい」と否定している。

 また同氏は、この件が裁判沙汰になったことに疑問を呈した。「専門的な視点からいって、生存権と動物の権利はすべての動物にある。(だが)動物の行動を人間化してはいけない。それこそ人間の特徴だ。我々は動物の行動を我々自身に例えたがるが、それは人類の生来の過ちだ」

 米ニューヨーク(New York)では今月、個人が飼育しているチンパンジーを法的な目的から「人間」とみなすよう動物愛護団体が申し立ていたが、裁判所はその申し立てを退けた。

 当のサンドラは法的論争にはまったく興味がない様子で、報道陣のカメラのレンズに近づき、飼育舎のガラスの壁の向こう側からそれを品定めしたかと思うと、葉の茂った木の下に移動して遊んでいた。(c)AFP/Paula Bustamante