【11月20日 AFP】アイルランドで、雌牛を妊娠させられないのは同性愛の傾向があるためだとして殺処分されることになった雄牛が、米人気テレビアニメ「ザ・シンプソンズ(The Simpsons)」の共作者サム・サイモン(Sam Simon)氏らの助命運動によって救われた。英国の保護区で余生を過ごすという。

 アイルランド・メイヨー(Mayo)州の農場で繁殖のため飼育されていた肉牛シャロレー(Charolais)種の雄牛「ベンジー(Benjy)」は、農場の雌牛を1匹も妊娠させることができなかった。そこで農場主は、ベンジーを種牛として役立たずだと断じ、食肉処理場へ送ることを決めた。

 しかし、この事実が地元紙に掲載されると、動物保護団体や同性愛者向け雑誌が助命運動を展開。国際動物愛護団体「動物の倫理的扱いを求める人々の会(People for the Ethical Treatment of AnimalsPETA)」とアイルランドの「動物の権利行動ネットワーク(Animal Rights Action Network)」、英国の同性愛者サイト「TheGayUK」が協力し、インターネット上で資金提供を募るクラウドファンディングを開始した。

 これに250人以上が応じ、ベンジーを農場主から買い取る資金として、まず4000ポンド(約75万円)が集まった。さらに、サイモン氏が5000ポンド(約93万円)を寄付したことが決め手となり、総額9000ポンド(約170万円)の寄付金によってベンジーは命を救われることとなった。

「畜産業における動物の運命は総じて悲惨だが、同性愛だからという理由でこの牛を殺すのは二重の悲劇だ」と、慈善家で動物愛護運動家としても知られるサイモン氏は語っている。

 農場主から買い取られたベンジーは来月、英イングランド(England)にあるヒルサイド動物保護区(Hillside Animal Sanctuary)へ移送される予定だ。(c)AFP