昨年11月17日の会議に出席した一流シェフたちの多くは、厨房での暴力は昔のほうがひどかったと語った。ピネラバルース氏は、客から調理の様子が見えるオープンキッチンスタイルにすれば、厨房での暴力隠蔽(いんぺい)が難しくなると主張した。

「分子料理法」で知られるシェフのティエリ・マルクス(Thierry Marx)氏は「料理人はますます低年齢化しており、マネジメント経験がない」と述べ、さらにレストラン評によるプレッシャーが強まっていることも一因に挙げた。

■厳しい修業を評価する声も

 やけどをさせることなど、もっての外としても、ある程度は厳しい修業に耐えるべきだという声も依然として根強い。そのおかげで過酷な料理人の仕事に耐える根性が身についたという意見は、シェフたち自身からも聞こえてくる。

 フランスのテレビ番組で有名なシェフ、クリスチャン・エチェベスト(Christian Etchebest)氏(45)が見習いに入ったのは15歳のときだった。「尻を蹴られたこともあったし、仔羊のあばら肉を頭に投げつけられたこともあった」というエチェベスト氏だが、そうした経験も「わたし自身のためになった。我々の仕事は非常にタフで、強い精神力が必要だからね」と肯定的だ。

 24歳の若いシェフ、レミ氏も見習い時代にいじめは日常茶飯事だった。だが、暴力はしつけ的なもので、厳しい扱いを受けることで強くなれたという。ある時はガスパチョ(トマト風味の冷製スープ)に味付けをするのを忘れ、ほかの料理人たちの目前で料理長にガスパチョを頭から浴びせかけられたこともあったという。泣きながら家に帰ったこともあるというが「あの経験がなければ、僕は料理人として成長できなかった」とレミ氏は言い切った。(c)AFP/Anne-Laure MONDESERT