■ファッションの見えない価値

 最後に、大西社長はファッションに対する姿勢を次のように語る。「ファッションは内面的な見えない価値があると思います。自分の世界をつくるには、自分が納得できる一定水準のもとに価値を判断したものを見つけることが大切で、それも見えないファッションだと思うんです。見えない価値で言えば、日々のお客様と当社のスタイリストの接点で起こることや、お客様が買うつもりでなくいらした時に環境・空間やスタイリストの一言で気持ちが豊かになってモチベーションが上がって帰られること、そうしたこと全てが価値です。三越伊勢丹にご来店されたお客様にそうした体験をご提案できることは百貨店ならではだと思います」

 ライフスタイルが(ある程度)買える時代。しかし、生き方はより非・消費的になっている時代でもある。時代は、よりモノよりコトへ、見えるものから見えないものへ価値を置く方向へ進んでいる。もしかすると、モノを買わなくても幸せなのだとしたら、百貨店は何かを買わなくても、上質なコトやサーヴィスを受け取ることでモチベーションを上げてくれる場所として存続出来るのかもしれない。

 その時、人々は「自分たちが本当は何を欲しいのか」理解するのだろう。【菅付雅信】

■プロフィール
1964年宮崎県生まれ。法政大学経済学部中退。「コンポジット」、「インビテーション」、「エココロ」などを創刊し編集長を務める。現在は雑誌、書籍、ウェブ、広告などの編集を手がける。著書に「東京の編集」「はじめての編集」「中身化する社会」等がある。

■「ライフスタイル・フォー・セールス」過去記事一覧
http://www.afpbb.com/articles/modepress/3007611
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