■気候変動の「爆弾」

 山吹色のスキーパンツとフード付き防寒服を着込んだタッカタックさんは、ここでは1980年代に、地球温暖化の影響が感じられ始めていたと回想する。温暖化に関連する温室効果ガス排出削減のための国際交渉が開始されるはるか以前のことだ。

 当時、ここの人々は「氷(形成)の時期や、融解の時期」の変化に気づき始めていたとタッカタックさんは言う。

 科学者らは現在、永久凍土層の薄化が壊滅的な気候変動を引き起こす恐れがあると懸念している。永久凍土は、北半球の露出した陸地全体の24%の範囲に及んでいる。

 フランス国立科学研究センター(National Center for Scientific ResearchCNSR)と加ラバル大学(Laval University)が北極の生態系を研究する目的で構成した共同研究チームに所属する仏人研究者、フローラン・ドミン(Florent Domine)氏は「これは、気候の爆弾になる恐れがある」と話す。

 クージュアラピクからヘリコプターで少し移動した場所にある泥炭地で、同氏は気温マイナス25度の深い雪の中を這い回るようにして測定機器を配置した。そして「永久凍土層が急速に融解すると、同層に含まれる二酸化炭素(CO2)とメタンが大気中に放出され、地球温暖化を悪化させる」と説明した。

 この脅威については、まだ十分に理解が進んでいない。国連(UN)の「気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate ChangeIPCC)」による気候予測には、永久凍土層からの排出量は盛り込まれていない。

 だがドミン氏によると、永久凍土層の融解によって放出されるCO2により、IPCCが予想する世界平均気温の上昇量が倍増する恐れがあるという。IPCCは、今世紀末までに世界の平均気温が4度上昇すると予測している。

 ドミン氏と研究チームは、大気中への温室効果ガスの放出源となる古代の植物の腐敗を観察している。植物の腐敗が起きる沼の数は、永久凍土層の融解によって増加する。

 タッカタックさんによると、これらの気候をめぐる異常を防ぐ手立てがほとんどなされない状況では、北極の居住者らは「この変化に適応する他に選択の余地がない」という。そして少し笑いながら、唯一良いことは北極の水産資源が豊富になったことと話した。

 一方でホッキョクグマに関しては、新たな土地で近縁種であるハイイログマの交配相手を見つけている。ノースウエスト準州(Northwest Territories)で射殺された「一見変わったクマ」を調べた2006年のDNA検査では、交配種の存在が確認されている。(c)AFP/Clément SABOURIN