イスラム教スンニ派(Sunni)の過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)との戦いに追われるイラクも、原油安で大きな打撃を受けている。コンサルタント会社エナジー・アスペクツ(Energy Aspects)のリチャード・マリンソン(Richard Mallinson)氏は、「イラクのハイダル・アバディ(Haider al-Abadi)首相は今のところ、国際社会の支援もあって、連立政権を維持しイスラム国の攻勢を阻止できているが、こうした状況下での支出削減は困難だ。イラクは今後1~2年のうちに深刻な経済危機に陥る恐れがある」との見方を示した。

■需要喚起やシェールオイルの生産抑制も?

 しかし、原油安により需要が喚起され、世界経済が活性化し、ひいては供給過剰分の吸収につながるとの見方もある。英銀バークレイズ(Barclays)が引用した国際通貨基金(IMF)のデータによると、短期間のうちに原油価格が25%下落すると、石油需要は0.5%押し上げられるという。

 ただし、原油安で世界の経済成長が促進されるようになるまでは、ある程度時間が掛かる。FX(外国為替証拠金取引)取引サイト、フォレックス・ドットコム(Forex.com)のアナリスト、ファワド・ラザクザダ(Fawad Razaqzada)氏は「数か月から1年はかかる」と述べている。

 また独コメルツ銀行(Commerzbank)によれば、原油安の影響で、米国のシェールオイル生産が抑制されることもあり得る。同銀のカルステン・フリッチュ(Carsten Fritsch)氏は、原油安は「(米国の)多くの生産企業にとって、採算性が試される厳しい試練になる」と分析している。

 OPECは米国産シェールオイルとの新たな競争に直面している。しかし、米国のシェールオイルは抽出過程のコストが高いため、採算性の維持には原油価格が高水準にあることが前提だ。(c)AFP/Caroline VARIN