まずはバックステージでヘアとメークの準備に追われる様子の撮影だ。犬ににおいを嗅がれ、いくつものセキュリティーチェックを過ぎて、ようやく世界有数の美女たちがいる場所に到達できた。ただ残念なことに、私に与えられた撮影時間は短いため、その場の雰囲気を満喫するような余裕はなかった。

 メーキャップアーティスト、ヘアスタイリスト、広報、アシスタント、メディアクルー、セキュリティーや特別に招待されたゲスト──みんなが入り交じり、鏡の前で準備するモデルたちの列を縫うように慌ただしく動いていた。そんな喧騒と熱気が入り乱れたカオスの中で私も何とか撮影ポジションを見つけながら、限られた時間内でできるだけ多くのシャッターを切った。10分はあっという間に終わり、私は外に出された。自分が興奮と動揺で、10分前より少し熱くなっているのを感じた。

 すぐに撮った写真を見直し、使えそうなものを写真部のデスクに送らないといけない。会場にはメディア用にプレスルームがあるわけでもなく、私はゴミ箱の横に見つけたスペースにかがみ込んで、必死になって写真を選んだ。

 次は本番のランウェイの撮影だ。開演1時間前に、もう1度セキュリティーチェックを受けなければならなかった。犬ににおいを嗅がれ、全身を調べられ、スキャンされ、ようやくランウェイのすぐ前に与えられた自分の撮影場所にたどり着いた。

 ファッションショーのオープニングはたいてい、ドラマチックな演出で幕を開ける。だが私たちは事前に何も教えられていないため、どんな照明が使われるのか見当もつかなかった。つまり、重要なオープニングを撮り逃さないために、光の加減を予測してカメラをセッティングしないといけなかった。幸い、私の読みは当たり、一発目からいい具合に撮ることができた。

 ロンドンファッションウィーク(London Fashion Week)のショーは最長でも10分で終わり、必要な写真や撮るべき瞬間がわかっているから、実際より短く感じることもある。一方、ヴィクトリアズ・シークレットのショーは45分も続いた。しかもすべてのモデル、すべてのランジェリーがカメラに収めるべき瞬間で、息をつくひまがない。さらにテイラー・スウィフト(Taylor Swift)やエド・シーラン(Ed Sheeran)など人気歌手のパフォーマンスも絶対に撮り逃せない。

 フィナーレの頃にはもう心身ともに疲れ切っていた。すべてが終わり会場を出たが、自分がいったい何枚撮ったのか、どの写真から送ればいいかもわからなくなっていた。