【12月15日 AFP】バングラデシュ南西部にある自然保護区シュンドルボン(Sundarbans)の三角州地帯で希少なイルカの死骸が発見された。死因はまだ特定されていないが、同地域では先週、タンカーが衝突・沈没する事故が起きており、原油が数百平方キロにわたって広がった。ここには、希少な野生動物が生息しているため、環境への影響を懸念する声が高まっている。

 地元紙ダッカ・トリビューン(Dhaka Tribune)は14日、この死んだイルカの写真を掲載。死骸については、衝突事故を起こしたタンカーから数千リットルの原油が流出しているシェラ(Shela)川沖の運河を漂っていたと伝えた。

 このイルカの死に原油流出が関係しているのかは現時点では不明だ。当局によると、インドとの国境をまたいで広大なマングローブ林が広がるシュンドルボンの三角州地帯では現在、流出した原油が最大350平方キロの範囲に及んでいるという。

 タンカーは9日、シュンドルボン地域内で別の船と衝突事故を起こして沈没した。同地域は、絶滅危惧種のイラワジカワイルカやガンジスカワイルカ数百頭の保護区域に指定されている。

 地元の森林管理当局によると、沈没したタンカーから約25キロ離れた場所で発見されたと伝えられているこのイルカの死骸については、死因を確かめるための検視解剖が行われる予定だという。

 周辺地域では、ボート100艇に乗り込んだ漁師ら約300人が、つぼ、鍋、スポンジなどを使って流出した原油を回収する作業に当たっており、また村民らも河岸の清掃を行っている。

 こうして集められた原油は、国営の石油会社が清掃作業を早めるために買い戻しを行っている。

 1万平方キロにわたって広がるシュンドルボン地域は、国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)の世界自然遺産に登録されており、世界的に有名なベンガルトラの最大の野生生息地でもある。

 同地域の三角州地帯には、河川と運河が網の目のように張り巡らされており、カワイルカや淡水性のワニなどの希少な水生動物が生息している。

 バングラデシュ・ジャハンギナガル大学(Jahangirnagar University)のモニルル・カーン(Monirul Khan)教授(動物学)は、今回の原油流出が「この壊れやすいマングローブの生態系で発生した最大規模の大惨事」になる恐れがあると警鐘を鳴らしている。

 同教授は14日、同三角州地帯を破壊し、犠牲者3000人近くを出した2007年の大型サイクロンに言及して「今回の事故によって森林地帯に長期にわたる被害がもたらされる。その影響は、サイクロン・シドル(Cyclone Sidr)よりもはるかに深刻と思われる」と語った。(c)AFP/Shafiqul ALAM