【12月11日 AFP】ある作品では米パンクバンド「ラモーンズ(Ramones)」のメンバーたちがまるで巨人のように、小さな地球の上に並んで立ち、別の作品では英パンクバンド、「セックスピストルズ(Sex Pistols)」のシド・ヴィシャス(Sid Vicious)が、ニューヨーク(New York)のチェルシーホテル(Chelsea Hotel)から追い出されているところだ──。

 これらの作品は、伝説的パンクバンドであるラモーンズのベーシストで作曲家の故ディー・ディー・ラモーン(Dee Dee Ramone)が描いたもので、ニューヨークで開かれている展覧会で展示されている。ディー・ディーの視覚芸術家としての側面は、2002年に死去するまでほとんど知られていなかった。

 作品の大半はラモーンズやその他のバンドのメンバーたちが題材となっている。薬物乱用などで苦しんだディー・ディーの作品には、意気揚々とベースを持った自画像や全身をサソリや頭蓋骨のタトゥーに覆われた恐ろしげな自画像も見られる。「彼はその日の気分で絵を描いた」と妻のバーバラ・ラモーン・ザンピニ(Barbara Ramone Zampini)さんは当時を振り返った。展覧会はザンピニさんが主催した。

 ラモーンズが開拓したパンク精神と同じで、これらの作品からは、ディーディーが正式な訓練をほぼ受けていないことがうかがえる。力強く直接的な表現で1970年代から80年代までのロックの精神とライフスタイルが描かれている。ラモーンズは1976年に発表したファーストアルバムで音楽界に衝撃をもたらした。ほとんどの楽曲は2分以内で、臆面もない単純さとけたたましいエネルギーに満ちていた。ラモーンズはロック音楽に極めて大きな影響を及ぼした。

 10日に始まった展覧会は、これ以上ないほどふさわしい場所で開催されている──ディー・ディーがザンピニさんと暮らしていたチェルシーホテルだ。

 現在リノベーション中のチェルシーホテルは、有名ミュージシャンたちが滞在したことと彼らがそこで行った「奇行」の数々で知られる。中でもとりわけ有名なのは、シド・ヴィシャスの恋人のナンシー・スパンゲン(Nancy Spungen)が1978年にホテルの室内で刺殺された事件だろう。

 展覧会には、ロックミュージシャンを撮る著名な写真家、ボブ・グルーエン(Bob Gruen)さんがニューヨークの地下鉄で撮影したメンバーのモノクロ写真の数々も展示されている。

 会期は1月1日まで。ザンピニさんは、欧州や南米でも展覧会を開催したい考えだ。(c)AFP/Shaun TANDON