【12月8日 AFP】中米ニカラグアの農民レオネル・サンチェス・エルナンデスさんのトウモロコシと豆の畑は干ばつで荒廃してしまった。そこで彼は嫌々ながら新しい「収穫物」を見つけた。クモのタランチュラだ。

 1匹あたり約1ドル(約120円)。体と脚が毛で覆われたこのクモをペットとして輸出するブリーダーに売る。サンチェス・エルナンデスさんの儲けは少ないが、ニカラグアでは1ドルあれば、米1キロ、あるいは牛乳1リットルが買える。

 サンチェス・エルナンデスさんと、彼のおばといとこの3人は、わずか2週間で400匹以上を捕まえた。

 こうしたタランチュラ狩りは、5月から9月に深刻な干ばつに襲われたニカラグア北部で行われている。

 27歳のサンチェス・エルナンデスさんは最初、岩や倒木の下の地中にある巣をつつきまわすことをちゅうちょしていた。それでも家族を飢えさせないために、彼は勇気を出してタランチュラの採取を始めた。

「今回初めてタランチュラの採取にいった。少し怖かったが、干ばつのせいでやるしかなかった」と、サンチェス・エルナンデスさんはAFPに語った。サンチェス・エルナンデスさんは妻と4人の子供を養っている。同じく干ばつの被害を受けた彼のおばもシングルマザーとして5人の子供を抱えており、生活は楽ではない。

 2人は、100キロ以上離れた首都マナグア(Managua)の郊外までタランチュラを売りに行く。買い取るのは、今月から輸出のために繁殖を始めた地元の企業エキゾチック・ファウナ(Exotic Fauna)だ。

 環境省の認可を受け、同社はおがくずを入れたガラスケースの中で、7000匹のタランチュラを飼育している。「蛇より高く売るつもりだ」と、同社のオーナー、エドゥアルド・ラカヨさんは言う。

 ラカヨさんはこのビジネスに6000ドル(約72万円)以上を出資した。カメを売って稼いだ金だ。

 タランチュラは肉食で、コオロギやネズミの赤ちゃんなどを食べる。ブリーダーはこうした食べ物を与えているが、1つのケースに入っているタランチュラは1匹だけだ。互いに争って殺し合わないようにするためだ。

 メスは1度に約1000個の卵を産む。そのうち、ふ化するのは300から700匹ほどだ。中国や米国のクライアントには、種を特定して注文してくる人もいるという。

 タランチュラの貿易は、ニカラグアがその豊かな生態系を利用して輸出を多様化しようとしている方法の一つだが、他国との競争もある。チリにはニカラグア産よりおとなしいタランチュラの種類がいる他、コロンビアや米国も市場に参入している。(c)AFP/Blanca MOREL