絶滅危惧種キタシロサイの雄が自然死、残り6頭に
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【10月20日 AFP】絶滅が危惧されているシロサイの亜種キタシロサイの1頭がケニアの自然保護区で死んだと専門家らが18日、明らかにした。
死んだのは雄のキタシロサイ「スニ(Suni)」。1980年にチェコのドブール・クラーロベ動物園(Dvur Kralove Zoo)で生まれ、2009年にケニアのオルペジェタ自然保護区(Ol Pejeta Reserve)に移された個体だ。同動物園によれば、「飼育下にある個体では、恐らく繁殖可能な最後の雄」で、自然死したとみられている。
希少なキタシロサイは、アフリカ中部~東部にかけての地域で角を目当てに密猟の対象となってきた。現在の生息数はわずか6頭となった。その角はアジア地域での伝統薬の原料として、高値で取引されている。
ドゥブール・クラローベはこれまでに世界で唯一、飼育下でのキタシロサイの繁殖に成功した動物園だ。2009年には、「生き残りをかけた最後のチャンス」と命名された作戦の下、スニと別の雄1頭、雌2頭の合わせて4頭が同動物園からプルペジェタ保護区に移された。
しかし、野生の環境下なら雌のホルモンバランスが正常化すると期待されていたが、これまでのところ人工繁殖の試みでさえ失敗に終わっている。
同動物園の広報担当者、ヤナ・ミズリべチュコバ(Jana Mysliveckova)氏はAFPに対し、「奇跡が起きることを信じたいが、置かれている状況は、自然繁殖の可能性はなくなったと考える方向へと私たちを導いている」と語った。
ドゥブール・クラローベ動物園で生まれた雄のキタシロサイ全頭の精子は、独ベルリン(Berlin)のライプニッツ野生動物研究所(Leibnez Institute for Zoo and Wildlife Research)に保存されている。
現在、米サンディエゴ(San Diego)のワイルドアニマルパーク(Wild Animal Park)でもキタシロサイの雄と雌が飼育されているが、このペアは繁殖適齢期を過ぎているとされ、またポーランドとの国境近くにあるドゥブール・クラローベには、高齢の雌1頭が残っているだけだ。
ミズリべチュコバ氏は、「密猟されるサイの数はここ数年で大幅に増加している。複数のシナリオでは、今後10年前後でアフリカに生息する野生のサイの絶滅が予想されている」と指摘した。(c)AFP