【12月8日 AFP】寒い冬の夜に、赤々と炎が燃える暖炉のそばでくつろぐ――ささやかな日常の喜びの一つが、フランス・パリ(Paris)ではもはや遠い昔の話となりそうだ。

 首都パリと近隣7県から成るイル・ド・フランス(Ile-de-France)地域圏の当局はこのほど、大気汚染対策として、2015年1月1日からパリ市内での暖炉の使用を禁止すると発表した。その他435市町村でも、まきを燃やす伝統的な暖炉は使用不可となる。排気がクリーンな密閉型まきストーブは引き続き使用できる。

 パリでは近年、大気汚染が大きな問題となっているが、暖炉の煙は大気汚染の要因となり、ぜんそくなどの呼吸器疾患を引き起こすことが分かっている。イル・ド・フランス県の環境エネルギー当局は、フランスでは毎年4万2000人が大気汚染物質が原因で死亡しており、暖炉の使用禁止はこうした有害な微粒子の削減が目的だと説明している。

 だが、この決定に怒りの声も上がっている。中でも強く反発しているのがパリの煙突掃除業者たちだ。

「パリにある暖炉13万5000基のうち、現在も使われているのは10%だけだ。しかも、年に6~7回程度しか使われていない」。パリで煙突掃除会社を営むティエリ・プジョー(Thierry Pujo)氏は、不満をあらわにする。

「暖炉は、家族のだんらんやクリスマス、恋人たちのロマンチックな時間のためにも欠かせない」と訴えるプジョー氏は、暖炉禁止令を「ばかげている」と一蹴。ディーゼルエンジンを禁止する方がよほど効率的だと訴えた。

 煙突から排出された暖炉の煙が、どの程度、大気汚染に寄与しているのかという点も論争となっている。

 イルドフランスの環境エネルギー当局によれば、同地域圏では大気中の微粒子の23%がまきを燃やした結果で、車の排ガスに匹敵する割合だという。また、暖炉から排出される微粒子の量は、密閉型まきストーブの8倍にもなると主張している。

 一方、パリとその周辺の大気汚染を監視している「エールパリフ(Airparif)」によると、大気中微粒子の39%は車の排ガスに由来し、暖炉でまきを燃やすことによる影響はわずか4%にすぎないという。(c)AFP