【12月1日 AFP】12年大統領選で屈辱的な敗北を喫し、不正資金疑惑が立て続けに浮上したフランスのニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)前大統領が政界からの引退を発表した時、有権者たちはこれが同氏の見納めと思っただろう──。しかし11月29日、所属する中道右派の国民運動連合(UMP)の総裁選で当選したことから「私について耳にすることはもうないだろう」との彼の言葉は、遠い過去のものとなった。

 サルコジ氏にとって今回の総裁選は、2017年大統領選でフランソワ・オランド(Francois Hollande)仏大統領からエリゼ宮(Elysee Palace、仏大統領府)の鍵を奪い返し、大統領に復帰するための最初の障害にすぎない。

 元スーパーモデルの妻と、その派手なライフスタイルから「ブリンブリン」とのニックネームを持つサルコジ氏は今年9月、フランスを政治的・経済的危機から「救う」ことを約束し、鳴り物入りで早々と政界復帰を宣言した。

 嫌悪と好感の声が半々を占める同氏の復帰は、仏政界に大きなうねりを引き起こし、すでに足並みが乱れていた党員らの二極化を生むことになった。

 英レディング大学(University of Reading)の仏政治学専門家、アンドリュー・ナップ(Andrew Knapp)氏は、「サルコジ氏は賛否両論のある政治家だが、非常に好かれていることだけは明白だ」と語る。

 しかし、歴代仏大統領の中で、サルコジ氏の不支持率を上回る唯一の大統領であるオランド氏との対決について考える前に、まずは2016年の予備選でUMPのライバルを阻止しなければならない。

 最も強力なライバルになるとみられているのは、サルコジ政権で外相を務めたアラン・ジュペ(Alain Juppe)氏だ。サルコジ氏の復帰を歓迎しつつも「レースは始まった」とコメントしている。

 ただそれ以上に厄介な障害物となりえるのは、2007年および2012年の大統領選で不正な選挙資金を受け取った疑惑で、サルコジ氏に対して再び牙をむく可能性がある。

 今回の選出についてナップ氏は、「同党の支持者らは、サルコジ氏にどんな判決が下されようとも、彼らの愛する人であり続けると判断しているようだ。ただ有権者の捉え方はそうとは限らないが」と語っている。

 生真面目な仏政界において、サルコジ氏は常にアウトサイダー的な存在であった。無一文でフランスに到着したハンガリーの特権階級の息子であるサルコジ氏は、28歳の時に市長として政治の世界に足を踏み入れた。その後は34歳で国会議員となり、38歳で初入閣を果たすと、弱冠52歳で大統領に就任している。

 就任中に2人目の妻と離婚し、元モデルで歌手のカーラ・ブルーニ(Carla Bruni)さんに公に求婚するなど、長年にわたる政界のタブーを破って私生活をオープンにもしている。

 オランド大統領の人気が低迷する中、選挙での勝利は難しくない可能性もあるが、サルコジ氏については大統領にふさわしくないとする声も根強い。いずれにせよ両氏共に、世論調査で現在最も支持を集めている極右政党・国民戦線(National FrontFN)を率いるマリーヌ・ルペン(Marine Le Pen)氏への対策を講じることが必要となってくるだろう。(c)AFP/Fran BLANDY