【11月26日 AFP】英劇作家ウィリアム・シェークスピア(William Shakespeare)初の戯曲集で、1623年に刊行された「ファースト・フォリオ(First Folio)」が、フランス北部の古い港町にある図書館で見つかった。

 仏北部カレー(Calais)に近いサントメール(Saint-Omer)の図書館で、司書のレミー・コルドニエ(Remy Cordonnier)さんは、英文学に関する展示会の準備のため、18世紀のものとされていたこの本を手に取ってほこりを払った。

 AFPの取材に対しコルドニエさんは、「未確認の『ファースト・フォリオ』かもしれない、とぴんときました。本物なら歴史的な重要性と知的財産として高い価値があるものです」と語った。

 ファースト・フォリオの専門家、米ネバダ大学(University of Nevada)のエリック・ラスムセン(Eric Rasmussen)教授が22日、この本が確かにシェークスピアの死後7年が経過した1623年に出版された同作品だとお墨付きを与えた。

 世界に現存する232冊のファースト・フォリオを20年かけて調べ、それらを紹介する本を上梓しているラスムセン教授は、今回見つかったものを233冊目と認定。新しい本の発見は約10年ぶりだという。

 同教授がAFPに語ったところによると、特徴的なすかし模様、使われている紙、後に出版されたものであれば訂正されているはずの誤植が残っていたことから、「すぐに本物と分かった」という。

 同教授によると、シェークスピアの存命中には出版されなかった「マクベス(Macbeth)」や「ジュリアス・シーザー(Julius Caesar)」といったシェークスピア戯曲の約半分はファースト・フォリオにしか収載されていなかったという。本作は徐々に「崇拝」の対象となり、19世紀に入ってから超富裕層が絶対に所有しておきたいものの一つになったと、同教授は話している。

 2006年には米マイクロソフト(Microsoft)の共同創業者ポール・アレン(Paul Allen)氏が、1冊のファースト・フォリオを600万ドル(約7億800万円)で購入している。

 サントメール図書館のフランソワーズ・デュクロケ(Francoise Ducroquet)館長は、ファースト・フォリオの価値は一般に250万~500万ユーロ(約3億6700万~7億3400万円)とされるが、同館で見つかったものは破損しているためそれよりは低い価値とされるだろうと述べた。とはいえ、他の貴重な収蔵品と一緒に金庫に保管するという。(c)AFP/Benjamin Massot with Fran Blandy in Paris