マネービジネスの詐欺を生む「不正直な」業界文化、スイス研究
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■「銀行員に特有の現象」実験で明らかに
実験を始めるにあたり、まず参加者を2つのグループに分けた。比較のための「対照」グループには日常生活や健康について質問し、一方の「実験」グループには自身の業務に関する質問をした。「1日平均何時間テレビを見ますか」といった質問と「銀行でのあなたの職務は何ですか」というような質問だ。このポイントは、自分が銀行員であるという意識を実験グループにしっかりと高めてもらうことだった。
論文によると、職業的アイデンティティー意識に起因する正直度の明らかな差異が認められることを、実験結果は示しているという。
対照グループがコイン投げゲームの「正解」を報告したケースは全体の51.6%で、基準値の50%に近かった。50%は、投げたコインの表裏を予測する2つに1つの統計的確率に相当する。
一方、「職業意識を高めた」実験グループは、全ケースの58.2%で「正解」を主張した。これは「偶然を著しく上回る」数字だと論文は指摘している。
筆者らの計算によると、少なくとも1回は「いかさま」をした参加者の割合は、対照グループでは全体の約16%だったのに対し、実験グループでは26%に達したという。
この結果について研究チームは、銀行員に特有の現象だと考えているという。というのも、銀行員ではない労働者と学生の2つのグループを対象に全く同じ実験を行ったところ、それぞれの「意識を高めた」場合でも正直度のレベルに変化はみられなかったためだ。
■文化の変革
論文の執筆者らは、「銀行業界に浸透しているビジネス的な文化では、不正直な行為の方が好まれる」と述べ、結果として詐欺が行われる可能性が高くなると指摘する。
「銀行業界のビジネス的な文化は、正直を旨とする規範を弱体化させている。このことは、正直な環境を再構築するための方策が極めて重要になることを示唆している」
だがこの問題を解決するには、不正直な行為によって得られる賞与を廃止するなど、銀行員の動揺を招く極端な選択を行うことになる可能性があると研究チームは説明する。
さらには、医師らの倫理綱領のような「倫理の誓い」を立てることになるかもしれない。
「このような『誓い』を立てることで、銀行員は目先の利益にとらわれるのではなく、自身の行為が社会に及ぼす影響を考慮するように促される可能性がある」と論文は述べている。(c)AFP/Richard INGHAM