■現役引退に後悔はなし

 仏ブルターニュ(Brittany)地方カロアーギュン(Calorguen)の農場で暮らすイノー氏は、小言を言いつつも、自身のキャリアに悔いはないという。

「もし明日『君は20歳だ。もう一度やり直し』と言われたとしても、僕は同じ人生を歩むよ」とするイノー氏は、「夢のような人生さ。みんなが僕のように生きられたら良いのに」と語った。

 農場の入り口には、現在使用しているグローブやショーツ、自転車用ジャージーが置かれている。そばの棚には、5度のツール制覇と、ジロ・デ・イタリア(Giro d'Italia)で3度、ブエルタ・ア・エスパーニャ(Vuelta a Espana)で2度優勝した証しである、杯やメダルが飾られている。

 32歳で現役を退いたイノー氏は、引退について、6年前から念入りに準備していたと話している。

「11月11日にきっぱりやめて、大宴会を開いた。お葬式のようなものじゃないよ。そして19日には、ASOで働く準備ができていた」

 イノー氏は、アモリ・スポール・オルガニザシヨン(ASO)で、ツール・ド・フランスの運営に携わっている。

 つまり、6度目のツール戴冠はかなわなかったということだ。

「もう2年続けていたら、もっと良い結果が出たかもしれない。またツールで優勝することができたかもしれない。でも、後悔は一つもないんだ」と、イノー氏は断言した。