【11月10日 AFP】 職もないし金もない。韓国で会社を退職した高齢者たちは、あるかないか分からないほどの年金ではとても生活できず、再就職口もなかなか見つからずに苦しんでいる。朴槿恵(パク・クネ、Park Geun-Hye)大統領が掲げるビジョン「創造的な経済」にも、造船所や製鋼所で働いていた世代の人々には居場所はほとんどなさそうだ。

 ソウル(Seoul)の小さなアパートに住む69歳のキム・ミンスさんの年金は月額59万ウォン(約6万2000円)。これだけで妻との2人の生活費を賄わないといけない。「4人の子供を育てて学校に通わせるために、働いていたときはほとんど貯金できなかった」と、キムさんは高齢者のための再就職センターの求人情報を見てから言った。

 仁川(Incheon)の製造工場でエンジニアの主任として働いていたキムさんの当時の月収は400万ウォン(約42万円)以上だった。今は生活するのに月に最低でも200万ウォン(約21万円)が必要だと言う。最近、小さな会社でフルタイム勤務の仕事を紹介されたが、月収は120万ウォン(約12万6000円)だった。

 少しの年金と子供たちからの援助があるキムさんはまだ恵まれているほうだ。

 韓国が年金制度を導入したのは1988年。65歳以上の約3分の1しか受給していない。多くはキャリアの終わりになって加入したために、受給額はほんのわずかだ。

 韓国では多くの企業が、50代の初めか半ばで退職を迫る。大半の人は再就職先を探さなければならない。実際の韓国人男性の引退年齢は平均71.1歳で、経済協力開発機構(OECD)によると定年退職後に働く時間はメキシコに次いで2番目に多い。

 再就職センターに来ていた71歳のキム・ヨンシクさんは「高齢者が警備員などの仕事を見つけることは、昔は簡単だった」、「だが今は65を超えていたら顔を見てもくれない」と語った。

 多くの退職者が仕方なく自営業を始めるように、キムさんも退職金を元手に電器店を開いたが、3年後につぶれた。

 政府は再就職支援のために職業訓練を提供しているが、ウェブデザインなど高齢者に適したものではないと、キムさんは言う。

 50代初めで退職を迫られた人々にとっても再就職先を見つけるのは困難で、多くの50代がそれまでの貯金や退職金で小さな食料品店や食堂を開いているという。韓国の統計によれば、現在同国内の自営業の経営者の半数が50歳以上だという。

 より多くの国民がより長く働けるように、韓国では60歳以上の定年を義務化する改正法案が今年4月に可決され、2016年から施行される。また5月には政府と事業主、労働組合の間で、定年延長による事業主の負担増に配慮し、ある年齢を最高値(ピーク)に設定し、それ以降の賃金を引き下げていく「賃金ピーク」制度を設けていくことで合意した。(c)AFP/Park Chan-Kyong