【11月6日 AFP】北朝鮮と韓国間の対話が順調に進んだためしはないが、平壌(Pyongyang)で現在協議を行っている双方の言語学者たちは、南北朝鮮の人々が少なくとも同じ言葉を話せるようにすることで、物事を正しい方向に進めようとしている。

 北朝鮮と韓国間でのイデオロギーの統一は難しくとも、広がる言葉の溝の橋渡し役となる統一朝鮮語辞書を作ろうとの25年におよぶ試みは、現在追い込み段階にある。先週には韓国の言語学者や辞書編集者の一団が、5年ぶりとなる北朝鮮側との協議のため、平壌入りした。

「非常に重要な作業だ」と語るのは、韓国側の編集責任者ハン・ヤンウン(Han Young-Un)氏。韓国側で進む言葉の多様化が、いつの日か南北統一が実現した際に、厳戒態勢が敷かれた南北軍事境界線のごとく北と南を隔てる大きな障壁となる恐れがあると考えている。

 平壌入り前にAFPの取材に応じたハン氏によると、言葉の違いは特に医師や弁護士らが用いる専門用語に多くみられ、その差は「北と南の建築家が共同で1軒の家を建てようとしたら苦労するであろうほど顕著だ」という。

 学校などで朝鮮語の使用が禁じられた1910~45年の日本統治時代が終わった後、南北に分断された韓国と北朝鮮はそれぞれに朝鮮語と識字率上昇に力を入れた。以来、南北の分離は60年以上におよび、分断以前は共通していた言葉も、両国の経済や政治同様に大きく差異が広がっていった。例えば「アガッシ」という言葉は南北で使われるが、韓国では「お嬢さん」を意味するのに対し、北朝鮮では「封建社会の奴隷」を意味する。

 それ以上に重大な問題は、南北どちらかの語彙目録に独自に加わった言葉が数多く存在し、それらが反対側の人々にとって理解不能である点だ。

 要因の一つは、北朝鮮が漢字語を排除し、新たに生み出した「本来語」と置き換える「純化政策」を進めたことにある。韓国で使われる言葉は50%以上が漢字語を由来としている。

 また北朝鮮ではロシア語からの借用語(「コミュニティー」を意味する「コンムナ」など)が多く流入し、韓国では英語からの借用語(ウインドーショピングを意味する「アイショッピン」など)が多いのが特徴だ。