■「インドの神は愛を営む」

 黄、緑、紫といったカラフルな展示室が並ぶ「THE KAMA-SUTRA」展。社会や社会的概念の他、妻となる女性の探し方と求婚の仕方、家具の配置の仕方などをテーマに、全36章からなる経典を巡る旅に来場者をいざなってくれる。

「カーマ・スートラ」には、ヨガのポーズにも見える性行為の体位を描いた描写が多数ある他、動物との性交渉を描いた絵も複数ある。

 展示室の解説には、「古代ヒンズー教においては、人間と動物の違いは、私たちの時代ほど明確にはされなかった。このことは、人間が前世において動物だった可能性があるということで説明される」と書かれている。

 来場者のミシェルさん(92)は、「ここには興味深いものがいくつかあるわ。例えば、女性とゾウ。もちろん、見ればほほ笑んでしまうわ。ウマの作品もかなり興味深いわね。でもこういう作品は、宗教的というよりも楽しむためのものだと思うわ」と語った。

 パンデ氏によると、インドの伝統では、性的なものは世界を見るための手段とされており、カーマ・スートラを理解しがたいものとしたのは、欧米社会におけるエロチシズムへの罪悪感だと指摘する。「罪悪という概念も、生殖のためだけに性行為を行うという概念もありません。素晴らしい人生をたたえるためのものなのです」

 このことは、ヒンズー教の神々の神殿を取り巻く神話にもみられる。神々は皆、配偶者を有している。

 ピナコテークのマルク・レステリーニ(Marc Restellini)館長は、「キリスト教では神は愛そのものだが、インドでは神は愛を営む。より多く愛を営む神ほど良い神なのです」と語った。(c)AFP/Fran BLANDY