風力発電所は急増し、とくに突風が吹く北部の沿岸部に広がっている。太陽光パネルも、政府による20年後には元が取れるとの保証を受けて、一般家庭や工場などで多く設置されるようになった。

 しかし、こうした急速な変化と混乱のなかで、エネルギーシフトは計画通りには進まず、遅れやコスト超過などの予期せぬ問題が生じている。例えば、再生エネルギー普及のための追徴金が電気料金を高額にし、欧州連合(EU)で2番目に高いまでになった。景気も以前ほどの活力がなくなっているなか、外国企業との競争を迫られている国内企業は懸念を強めている。

 また巨大な風力発電所の建設には技術的な問題や地元の反対運動もあり、北部から産業地帯の南部まで高電圧送電網を敷設する計画に遅れがみられる。

■過去2年間の二酸化炭素排出量は増加

 エネルギーシフト政策における最大の皮肉は、温暖化対策になるはずが、過去2年間の二酸化炭素排出量は増加しているという点だろう。

 問題は自然エネルギーが天候に左右されることだ。太陽が出なかったり風が吹かなければ、従来の化石燃料を使った発電が必要になってくる。比較的クリーンで柔軟性のあるガス発電が理想的だが、電力会社は再生可能エネルギーの供給過多のせいで大損害を受けており、ガス発電施設の一部を閉鎖している。その結果、天候不順で再生可能エネルギーが足りなかった場合の不足分が、安くて環境に悪い石炭火力発電でまかなわれているのだ。

 欧州の排出権取引市場が崩壊しつつあることも事態を悪化させた。企業が温暖化効果ガスの排出によるコスト高を心配する必要がなくなったためだ。

 結果として、今年1月から9月までのドイツの電力の内訳はクリーンエネルギーが27.7%を占めて最大だが、次の火力発電は26.3%と迫り、その差はわずかでしかなかった。 (c)AFP/Frank ZELLER