【10月24日 AFP】ドナ・ハーディング(Donna Harding)少佐がオーストラリア陸軍に入隊したのは、幼いころから抱いていた気持ちを抑え込むためだった──自分は男の子の体に閉じ込められた女の子だ、という気持ちだ。

「性別に違和感を持つ人たちにとって、自分に何かおかしいところがあって、軍隊に入ることでそれを正せると考えるのは、よくあること」

 ハーディング少佐がこう語ったのは、外国の軍に所属するトランスジェンダー(性別越境者)の兵士らが集まり米首都ワシントン(Washington D.C.)で開かれた初の会合でのこと。出席者らは、米国防総省と米政府に対し、トランスジェンダーの兵士らがその事実を隠さずに従軍することを許すという、米軍にとって恐らく「最後のタブー」を破るよう求めている。

 米国の主要な同盟国であるオーストラリアや英国、カナダ、スウェーデン、ニュージーランドを含む世界18か国の軍はすでに、トランスジェンダーの入隊を公式に認めている。一方で2011年に兵士らに同性愛者であることを公言することを禁じ、賛否両論を呼んでいた通称「聞くな、言うな(Don't Ask, Don't Tell)」法が撤回された米国では、トランスジェンダーの入隊を認めるべきとする議論がほとんどなされていない。

 米軍に所属するトランスジェンダーの兵士は約1万5500人と推定されているが、現行規則の下では、それが発覚すれば除隊を余儀なくされる。

 チャック・ヘーゲル(Chuck Hagel)米国防長官は今年に入り、この規則について再検討する用意があることを示唆した。だが、現時点では規則の見直しは行われておらず、トランスジェンダーの人々を軍に公式に受け入れようとする動きがあれば、それは論争を引き起こす可能性が高い。

 2000年に豪軍の予備役部隊、2004年に正規軍に入隊したハーディング少佐は、「誰かに秘密が暴かれるのではないかという絶え間ない恐怖や不安と共に過ごしてきた」「正面から向かってくるトラックに車で突っ込めばどれだけ楽になれるだろうとの考えが、これまでに数え切れないほど頭をよぎった」と語り、トランスジェンダーの人たちの80%が自殺を考えたことがあり、約40%には自殺未遂の経験があると指摘した。

 女性になった現在、豪陸軍看護師団に所属するハーディング少佐は、米国自由人権協会(American Civil Liberties UnionACLU)が主催したこの討論会の聴衆に向け「自分の務めを果たすためには、オープンで偽りのないことが重要だ」と訴えた。

 また、討論会に出席したスウェーデン空軍のアレクサンドラ・ラーション(Alexandra Larsson)少佐は、女性になる勇気を出したときに支援を得ることができた自分は幸運だったとした上で、自身は今「世界で最高の仕事」に就いていると語り、全ての人に平等な機会が与えられるべきだと訴えた。