【10月16日 AFP】風を受けて空高く舞い上がるワシは、乱気流に遭遇すると翼を折り畳み、筋肉の損傷を防いでいることを示唆する実験結果が、15日の英国王立協会(British Royal Society)の学術誌「Journal of the Royal Society Interface」発表された。

 英オックスフォード大学(Oxford University)の動物学者のチームは、両翼を左右に広げた際の幅が1.9メートルに及ぶ猛禽類、ソウゲンワシ(学名:Aquila nipalensis)の飼育鳥に小型の飛行記録計を取り付けた。

 背負い袋に格納されたこの75グラムの小型の装置は、英ウェールズ(Wales)の人里離れた場所の上空を飛行するソウゲンワシの位置、飛行速度、加速度を測定。研究チームは同時に地上からワシの映像を撮影した。

 45回分の飛行データを調べた結果、ワシは大きな突風を受けて上方に突き上げられた時、瞬間的に両翼を体の下に下げ、「翼を折り畳む」ような動きをして反応していることが分かった。

 この動きにより、ワシは急降下する形になるため、翼にかかる空気抵抗は低減される。

 1回の「折り畳み」の動作の持続時間は約3分の1秒だが、非常に風が強い状況では1分間に最高3回用いられていた。

 グラハム・テイラー(Graham Taylor)教授(動物学)は「急な上昇飛行は、労力を必要としないようにみえるかもしれないが、ただ労せずして風に乗っているわけではない」と語る。

「急の上昇で鳥は長い距離を飛行することができるかもしれないが、同時に飛行筋に甚大な負担をかけることになる」

「上昇気流などの上向きの空気の塊は、多数の乱気流やバフェッティング(風の乱れによる振動現象)を発生させる性質があるため、これによって鳥は翼が急激に揺さぶられ、空からたたき落とされる恐れがある」

 翼を折り畳む動作は、自動車のサスペンション(緩衝装置)のような働きをしており、ワシが大きな突風によって傷つけられるのを防ぐために衝撃を吸収する役割を果たしていると考えられる。ワシは、コンドルやトビなどを含む滑空飛行する鳥類に分類されている。

 これまでのところ、実験は1羽の鳥に対してのみ行われているだけなので、他種の鳥も「折り畳み」の技を用いるかどうかは不明だ。

 この技は、航空機の設計技師らの興味を引く可能性があるとテイラー教授は指摘しているが、ジェット旅客機などの固定翼の大型航空機に適用される可能性は低い。それでも乱気流に弱い超軽量飛行機には有用な技術になるかもしれない。(c)AFP