【12月20日 AFP】カナダ・モントリオール(Montreal)の空を旋回していたイヌワシが公園に舞い降り、幼児を連れ去ろうとした動画がインターネットで注目を集めていたが、この動画が実は「作り物」だったことが19日に発覚した。

 動画では、羽を広げると横幅が2メートル以上にもなる巨大なイヌワシが公園の上を舞っていたかと思うと急降下し、無邪気に座っていた幼児を引き上げ、数メートル進んだところで幼児を芝生に落とした。撮影者の男性が駆け寄ると、幼児は泣き出しはしたものの、けがは負っていない様子で動画に映っていた。

 動画サイト、ユーチューブ(YouTube)に投稿されたこの動画(www.youtube.com/watch?v=CE0Q904gtMI)は人気を集め、19日正午までに100万回以上再生されるとともに、ツイッター(Twitter)で話題になった。

 しかし、カナダ国立アニメーション・アンド・デザイン・センター(Centre NAD)のブログに掲載された「モントリオールのみなさんへ:イヌワシにさらわれても大丈夫です」と題した投稿が、この動画は同校の学生4人による「授業の課題作品」だったことを明らかにした。これによると、映っている子どもとイヌワシは3Dアニメーションで、それを実写映像に合成したものだという。

 実はこの発表の前に、ビデオの信ぴょう性を疑う声が数人のジャーナリストから上がったほか、最初は映っていなかったイヌワシの影が突然現れたことを示す数枚の静止画像も投稿されていた。

■野鳥保護団体は批判、ネットユーザーからは賞賛の声

 この公園から50メートルほど離れた場所にオフィスがあるという保全生態学者のクロード・ドロレ(Claude Drolet)氏は、この動画は確かにこの公園でおそらく11月に撮影したものだと述べつつ、ワシに襲われて助けも求めず、公園当局に通報もしないことなどありえないと指摘した。

 一方、かつてグレート・ブラック・スワンプ(Great Black Swamp)という湿地帯だった地域の野鳥保護観察活動を行う非営利団体(NPO)、ブラック・スワンプ野鳥観測所(Black Swamp Bird Observatory)は、この動画を「野鳥にとって有害」だと批判している。

 ブラック・スワンプ野鳥観測所は交流サイト(SNS)フェイスブック(Facebook)上で、「イヌワシはモントリオール地域にはめったにやって来ない。その上、このビデオに映っている鳥はイヌワシでもなければ北米にいる野鳥のどれでもない」、「世の中にはびこっている自然に対するまったくの無知から生まれるのはこうした類のゴミだけだ」という鳥類専門家ケン・カウフマン(Kenn Kaufman)氏の痛烈な批判の言葉を引用した。

 とはいえ、多くの人は「作品」をただ楽しんでいる。ツイッターなどで目立っているのは「このイヌワシが作り物だとしたら、すごくうまくできている作り物だ」という驚きと称賛の声だ。(c)AFP