■本土出身者に対する偏見

 それでも、どれほど熱く民主主義を支持しようとも、本土出身者がデモに参加する香港人の信頼を得ることは容易ではない。

 動画投稿サイト、ユーチューブ(YouTube)で広まった、香港の商業地区・旺角(Mongkok)で撮影したあるビデオでは、1人の中国本土出身の女性が、デモの参加者たちから親政府派と間違われ、ブーイングを浴びていた。この中年の女性は、本土訛りの強い広東語で「1989年に私はあそこにいたんです」と叫び、天安門事件の学生たちを支持していたことを示唆し、今回のデモへの支持も口にしたが、群衆は親政府派がいることを伝えるときの合図となっている「ハッピー・バースデー」の曲に合わせて手を叩き、女性をやじった。

 四川(Sichuan)省出身の女性、ジエさん(25)は民主主義には賛成しているが、本土出身者に対する香港人の「排他的な態度」が嫌で、デモとは距離を置いている。香港には、本土出身者は金を持った田舎者だ、という偏見が多いのだと言う。学生だった頃、香港でよく耳にしたのは、アジア地域で覇権を握ろうとする中国を皮肉った広東語の侮辱語「強国人」(Keung gwok yun)だった。

 今年6月に香港大学が行った調査では、自分を「香港人」だと自覚する人は急増し、逆に「中国人」だと自覚する人は1997年の香港独立以来最低だった。

 ジエさんは「香港人と本土出身者の間の溝は毎日どんどん大きくなっている。何故、お互いの言うことに耳を貸せなくなってしまったのだろうか」と現状を嘆いた。(c)AFP/Anuj CHOPRA