【10月16日 AFP】1980年代初頭、貨物船の船底におもしとして積まれたバラスト水に潜んで大西洋から黒海へと渡ったクシクラゲは、たった10年で黒海のアンチョビーを壊滅状態に追い込んだ。黒海はクラゲにとって、餌の魚卵が豊富で天敵ゼロの天国だったのだ。

 こうした侵略的外来種(侵入種)が「現代の海洋環境における最大の脅威の一つになっている」と、国際海事機関(International Maritime OrganizationIMO)の関水康司(Koji Sekimizu)事務局長は指摘する。

 ときには、顕微鏡でしか見えないほど小さな外来生物が破壊的な影響を及ぼす。新しい生息環境にあっという間になじみ、海を植民地化して生態系をめちゃくちゃにしてしまう。

 だが、この問題を解決するカギとしてIMOが2004年に採択した「バラスト水管理条約(International Convention for the control and management of Ships' Ballast Water and SedimentsBWM)」は、10年後の今も発効できていない。条約の発効要件が、いまだ満たせていないためだ。

 発効要件は、30か国以上が批准することと、批准国の商船船腹量が世界の商船船腹量総トン数の35%以上を占めること。条約批准国は既に40か国に上るが、パナマやギリシャ、中国といった貨物船を多く所有する国が批准していないため、商船船腹量は30%強にとどまっているのが現状だ。

 条約では、船舶にバラスト水の処理装置の設置を義務付ける。「強力な法的手段」になると関水氏は述べ、全IMO加盟国に対して批准を促していることを先月、IMOウェブサイトに掲載された動画で説明した。「タイミングは今しかない」