【10月13日 AFP】香港(Hong Kong)で続く民主的な行政長官選挙を求める抗議行動に対し、中国政府が報復措置に出るのではないかとの恐れが膨らんでいる。しかし、中国にとって香港の経済的価値は非常に高く、ライバルとして上海(Shanghai)が頭角を現しているといえども、懲罰を与えて中国経済の主役の座から引きずり下ろすことは当面できないだろうと観測筋は指摘する。

 2017年に行われる次期行政長官選挙で完全な民主的選挙の実施を求めるデモは、時に数万人規模の参加者を集めながら、この数週間、香港の路上を占拠し都市機能をまひさせてきた。こうしたなか香港では、体制批判には容赦ない中国政府が妥協しない姿勢を示すため、「高度な自治」を謳歌する香港に制裁を加えるのではないかとの懸念が広がっている。

 最大の脅威は、共産党指導部が「金融ハブ(中心地)」として成長著しい上海を優遇し、旧英国植民地で自由経済によって繁栄する香港を爪はじきにするのではないかというものだ。上海では昨年、当局が鳴り物入りで自由貿易試験区(FTZ)を開設している。

「中国に抵抗している香港は、信頼できないパートナーとみられている」と、香港に拠点を置く証券会社ジオセキュリティーズ(Geo Securities)の最高経営責任者(CEO)で金融アナリストのフランシス・ルン(Francis Lun)氏は言う。「これにより、上海が将来的に香港に代わって中国の金融センターになるというトレンドが加速するだろう」

「もし潮目が変われば、後戻りはない」とルン氏は補足した。「そうなる可能性はある。それも、非常に速く」

 だが、短期的には香港が軽んじられるリスクはないとの見方を専門家らは維持している。なぜなら、それは香港を自国の一部だと繰り返し強調し、重要な経済のパイプとして利用している中国にとって自滅行為だからだ。

 香港に経済的打撃を与える制裁措置を取れば、香港の人々の「強硬姿勢を強める」だけだと、英経済調査会社キャピタル・エコノミクス(Capital Economics)の中国担当エコノミスト、ジュリアン・エバンスプリッチャード(Julian Evans-Pritchard)氏は指摘する。

「もちろん、中国は抗議行動で起きていることを好ましくは思っていない。だが、中国は今もなお、香港を手本にして中国本土で数々の(金融)改革を行おうとしている」「したがって、中国は香港を後退させたがらないだろう。報復するのは愚かだ」(エバンスプリッチャード氏)