■いかにして急速に過激化するか

 ノラさんの身に起きたことは、フランス国内で確認された唯一の事例ではない。フランス政府は帰国したイスラム聖戦士たちが自国で攻撃を企てることを危惧しているが、純粋に人道的な目的を掲げて出国したにもかかわらず、現地で目にした出来事に幻滅した人も少なくないという。

 フランスに帰国し、身柄を拘束されたイスラム聖戦士らの弁護士を務めるマーティン・プラデル(Martin Pradel)氏は、シリアに出国した人の数は2013年夏に爆発的に増加したと語る。

「(シリアの)バッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領による化学兵器の使用、そして米国なしでは軍事介入しないとしたフランス政府の決定が(シリアへの出国者急増の)引き金となった。彼ら(出国者ら)は、シリアの人々に救いの手をさしのべることが自らの責務と考えた」

 出国者らの多くは、動画サイトのユーチューブ(YouTube)やソーシャルネットワークを中心にインターネットで多くの時間を費やし、イラクとシリアの一部を掌握したイスラム教スンニ派(Sunni)過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」や国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)系のイスラム武装勢力「アルヌスラ戦線(Al-Nusra Front)」が掲げた衝撃的な画像やメッセージを見た。

 彼らは、モスク(イスラム礼拝所)へは行かず、家族や友人たちとも疎遠になった。

 プラデル氏によると、「過激化のプロセス」は非常に速く、ある依頼人のケースではわずか1か月たらずだったという。

 仏人イスラム聖戦士についての書籍をプラデル氏とともに執筆した記者のデービッド・トムソン(David Thomson)氏によると、フランスから出国した人々の背景は様々だという。

 若者に限らず、地方出身者や都市部の出身者、家族のある人や安定した職に就いている人、また以前からのイスラム教徒や新たにイスラム教に改宗した人──仏内務省によると改宗者は全体の21%に上る──もいるという。