【10月8日 AFP】F1第15戦日本GP(Japan Grand Prix 2014)決勝で頭部に外傷を負ったマルシャ(Marussia F1 Team)のジュール・ビアンキ(Jules Bianchi)について、家族と入院先の病院が7日、共同声明を出し、深刻ではあるが状態は安定していると発表した。

 両者はビアンキが所属するマルシャを通じて声明を発表し、「ジュールは今もなお三重県立総合医療センターの集中治療室にいます。びまん性軸索損傷を負い、重体ですが、状態は安定しています」と明かした。

「病院にいる医療のプロが最善の治療と処置を施しており、われわれは、事故以降の彼らの仕事すべてに感謝しています」

 25歳のビアンキは、豪雨の中で行われた日本GP決勝のレース終了間際、コース脇の撤去用車両に高速で突っ込むという凄惨な事故に遭った。

 ビアンキは意識がないまま救急車で近くの病院に搬送されると、医師が極めて危険な状態と判断したため、すぐに緊急の脳手術を行った。

 びまん性軸索損傷は、頭部に深刻な損傷を負った際、半分の確率で発生する。衝突による衝撃が脳の上から下に伝わる際に生じる損傷で、前進していた車が突然に急停止し、運転手の頭部が前に激しく揺さぶられた直後、一気に揺り戻された場合にも起こるという。

 その際のせん断力によって、脳の軸索が断裂し、脳細胞が破壊される。さらに、損傷によって脳が腫れるため、圧力が高まって血流が阻害され、脳がさらなる損傷を負うこともある。

 このけがから回復した人の割合は、勇気づけられる数字ではない。

 ジュールの両親であるフィリップ(Philippe Bianchi)氏とクリスティーヌ(Christine Bianchi)夫人は、すでに来日して息子に付き添っており、7日にはフランスの著名な外科医、ジェラール・サイアン(Gerard Saillant)医師も駆けつけた。サイアン医師は昨年12月、スキー中に重大な事故に遭った元F1レーサー、ミハエル・シューマッハ(Michael Schumacher)氏の治療を担当した。

 共同声明では、「われわれはまた、国際自動車連盟(International Automobile FederationFIA)医療委員会会長のジェラール・サイアン教授、ローマ・ラ・サピエンツァ大学(Rome La Sapienza)神経外科医のアレッサンドロ・フラーティ(Alessandro Frati)教授の存在にも助けられています。フラーティ教授は、フェラーリ(Ferrari)の要請で日本に駆けつけてくれました」と述べられている。

「2人は本日、病院に到着し、ジュールの担当医と面会しました。本人の状態について詳しい情報を得て、家族に助言を行うためです」

「サイアン、フラーティの両教授は、三重県立総合医療センターが卓越した処置を行ったと認識しており、日本の医師たちに感謝したいと話しています」

「ジュールの経過観察と治療はセンターが引き続き行い、容体についての新しい情報については、適切にお伝えしていくつもりです」

(c)AFP/Daniel ORTELLI