■コーヒーは戦闘員が独占

 ラッカの活動家たちはこれまで、嗜好(しこう)品や娯楽はイスラム国の戦闘員専用とされ、一般市民の利用は禁じられていると頻繁に訴えてきた。活動家らはネットに戦闘員で満員のラッカのコーヒーショップの写真を投稿し、非戦闘員は憩の場の利用が禁じられていると苦言を呈している。

 アラブ諸国では街の風景としておなじみのコーヒーショップだが、地元住民らによるイスラム国侵攻阻止の努力も失敗に終わったデリゾール(Deir Ezzor)で現在も営業しているコーヒーショップは一つもない。

「ここでは楽しみや面白いことは、何一つ認められていない」と、活動家のラヤン・フラティ(Rayan al-Furati)氏(仮名)はネットを通じたAFPの取材に語った。「喫煙はおろか、たばこを売ることさえ想像できない。全身をベールで覆っていない女性を目にすることもあり得ない」

 毎日、イスラム教の礼拝で祈祷を主導するムアッジンが祈りの時刻を告げると、みな店を閉めてモスクへ向かう。さもなければ身柄を拘束されるからだ。

 しかし、イスラム国の戦闘員たちにとっては、シリアのイスラム国支配地域での生活は心地よいものだ。その理由は彼らが受け取る報酬などの恩恵だけではない。

 ラッカを拠点とする活動家で、身元の特定を防ぐため仮名でインターネット取材に応じたフラート・ワファ(Furat al-Wafaa)氏によれば、イスラム国の最下級幹部の報酬は月300ドル(約3万3000円)。「現状からすれば、かなりの額だ」という。

 だが、イスラム国の寛大さは支配下に置かれた人々までには及ばないとワファ氏は言う。「ダーイシュは本物の国家ではない。仲間には望むものは全て与えるが、ほかの市民たちは、その対象とならない」

 ワファ氏はイスラム国を「恐怖を通じて人々を支配するマフィア」に例える。「市民は空腹から、イスラム国の構成員にならねばならない状況に追い込まれる。まともな給料を得るには、それしか手段がないからだ」

 さらにイスラム国は市民から税の徴収も行っている。「貧しすぎて支払いができない市民でさえも逃れられない。だからみなイスラム国に加わる。人々には飢えて死ぬか、脅しの中でイスラム国の構成員となるかの選択肢しかない」(ワファ氏)。4年近く続く内戦により困窮した店主らは、月約60ドル(約6500円)の税金をイスラム国に納めているという。