【9月15日 AFP】安倍晋三(Shinzo Abe)首相は直近の内閣改造で、過去最多に並ぶ5人の女性閣僚を起用し、女性の労働力拡大による経済活性化の取り組みを強調したが、この構想を実現させるためには、まだ数多くの課題が山積している──。

 法相や経済産業相などの重要ポストに女性が起用された第2次安倍改造内閣。全閣僚18人のうち、5人が女性となり、安倍首相も「女性が輝く社会の実現も安倍政権の大きなチャレンジであります」と述べている。

 政府のこうした動きの背景には、急速に進む高齢化が国庫を圧迫する一方、高い教育水準にもかかわらず、職場の環境によりその能力を十分に発揮することができない女性たちをもっと活用すべきだ、との声が高まりがある。

 政府は、2020年までに「指導的地位」に占める女性の割合を、現在の世界最低水準の11%から30%に高める目標を掲げた。トヨタ自動車(Toyota Motor)やパナソニック(Panasonic)、全日空(All Nippon AirwaysANA)など大手企業も、女性管理職比率を上げる方針を相次ぎ明らかにしている。

 だが、いわゆる「性差別」的な考え方が依然根強く、政界や実業界での男性の比率が圧倒的に高い国で、こうした取り組みを進めるのは一筋縄ではいかないとの見方もある。

 長時間労働や仕事後の上司との飲み会、不足する保育施設なども、日本の女性が専業主婦を選んだり、出産後に昇進をあきらめたりするケースが多い理由として挙げられる。

 日産自動車ダイバーシティーディベロップメントオフィス室長で二児の母親である小林千恵(Chie Kobayashi)さん(46)は、05年に日産自動車(Nissan Motor)のブラジル事業所へ赴任し、海外に駐在する同社初のワーキングマザーとなった。

「若い独身のときから外国で働きたいと思っていた。でも私が若いころには、まだまだ外国での研修への参加や外国への赴任は男性社員に命じられることが多かったです。女性にとってはそういう機会は少なかったですね」

 大学卒業後すぐに日産に就職した小林さんは、1999年の仏ルノー(Renault)との資本提携がきっかけで、自身の仕事の選択肢が広がったという。「他の日本企業に比べたら、日産は多分いい感じでダイバーシティ(多様化)が進んでいると思います…ルノーと提携したときに変わらざるをえなかったということもありますが」

 しかし、指導的地位に占める女性の割合を30%に引き上げる政府目標については、「数字だけを求めても、ゆがみが出てくるし、うまくいかないと思う。例えば女性に対して甘い人事考課をするといったような」 と懐疑的だ。