だが今年4月18日の雪崩を受けてネパール側からの登頂ルートが閉鎖された。これにより、ボリンジャーさんはせっかく立てた登頂計画を捨て、チベット側から頂上を目指すことを余儀なくされた。

 この災害はヒマラヤの労働問題を浮き彫りにした。シェルパたちが報酬と待遇の改善を訴える一方、多くの外国人がエベレスト登頂のために高額の料金を支払っている業界の現実が明るみに出た。ボリンジャーさんのアルペングロウは、料金が最も高い業者の一つだ。

 ボリンジャーさんは、「エベレストにもある程度の管理が必要だろう。(エベレスト登頂は)いつの間にか、『人が死ぬまでにやりたいこと』の一つになりすぎてしまった」と認める。「ネパール政府は悪徳業者を摘発しないといけない。登頂希望者はもっと経験を積んでくる必要がある」

 ボリンジャーさんは自分のクライアントに、8000メートル級の山の登頂経験が少なくとも1回あることを義務付けている。これでは、登山業者の最も大きな収入源であるアマチュア登山家が参加できず、稼ぎがなくなるだろうとの指摘もあるが、ボリンジャーさんは気にしていない。

「もちろん会社の業績のことは考えるが、この新しいやり方で最初は収入が減ったとしても、それは仕方ない」と、ボリンジャーさんは言う。「このやり方が成功すると強く感じているし、エベレストに登るにはこのやり方のほうが安全だ。10年後にはエベレスト登山者の大半が、短期間での登頂を目指すようになっているはずだ」(c)AFP