【9月5日 AFP】数千キロ離れたインドとフランスにいる人同士が、心に思った簡単なメッセージを直接接触することなく相手に伝える実験に、米ハーバード大学(Harvard University)の専門家らが率いる研究チームが初めて成功した。

 この実験は、たとえ相手が数千キロ離れた場所にいても、テクノロジーを使えば脳から脳への情報伝達が可能であることを示している。

 論文の共同執筆者で理論物理学者のジュリオ・ルッフィーニ(Giulio Ruffini)氏は、スペインのバルセロナ(Barcelona)でAFPの電話取材に応じ、「テレパシーという夢の技術的実現と言える。しかし、魔法などでは断じてない」「われわれは、電磁波で脳とやりとりする技術を使用している」と語った。

 実験では、インターネットに接続した無線脳波計を装着した人に、「オラ」(スペイン語で「こんにちは」)や「チャオ」(イタリア語で「こんにちは」または「さようなら」)といった簡単な挨拶の言葉を思い浮かべてもらった。

 コンピューターはその言葉を、1と0で表される2進コードに変換。このメッセージは、インドからフランスに電子メールで送信され、ロボットを通じて受信者に届けられた。受信者は、非侵襲的脳刺激によって、周辺視野で点滅する光を見ることができた。

 受信側は、言葉そのものを聞いたり見たりすることはできないが、メッセージに対応する光の点滅を正しく伝えることができたという。

 研究者らは過去10年ほどにわたり、こうしたやり方で人から人へメッセージを伝える試みを行ってきた。だがルッフィーニ氏によると、米オンライン科学誌プロスワン(PLOS ONE)で今回発表された基本原理の証明は、まだ初期段階にあるという。

「これが人々のコミュニケーションの仕方を劇的に変えるかもしれないとの長期的な期待をわれわれは抱いている」と同氏は語った。(c)AFP