【7月30日 AFP】近未来の企業は、広告や音楽、映画などの試験版を少数の試験者に見せて脳信号を観察し、大衆の反応を公開前に知り得ることが可能になる──29日の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された研究論文は、いわゆる「神経信号」に関する特異な実験の結果を示している。

 研究は、コマーシャルやテレビ番組の試験版を少数のグループに見せて脳内の活動をスキャンすることで、より幅広い層の視聴者がどのような反応を示すかを予測できるとするものだ。研究者らは、「フォーカスグループ(情報収集目的で集められた対象グループ)」に対して政治的思想をテストすることにも応用できるとしている。

 論文を発表した米スタンフォード大学(Stanford University)のヤツェク・ドモショフスキー(Jacek Dmochowski)氏率いる研究チームは、19歳~32歳までの被験者16人にテレビを視聴させ、脳信号を記録する実験を行った。

 被験者には、米人気テレビシリーズ「ザ・ウオーキング・デッド(The Walking Dead)」の2010年のエピソードと、アメリカンフットボールの2012年と2013年のスーパーボウル(Super Bowl)で初めて放映された複数のコマーシャルを視聴させた。

 実験では、脳波記録(EEG)センサーを被験者に装着して、脳内のさまざまな部位の電気的活動を観察。同時に脳血流の位置を特定して脳活動のマッピングを行う機能的磁気共鳴断層撮影法(fMRI)を用いて被験者の脳をスキャンした。

 その結果、見ているものに対して被験者が完全に集中または「熱中」していることを示す強い相関関係が、脳信号のいくつかのパターンに存在することが分かった。

 被験者の興味レベルは、より幅広い範囲の大衆が番組やコマーシャルに示した反応と一致した。大衆の反応は、マイクロブログのツイッター(Twitter)や米市場調査ニールセン(Nielsen)の視聴率順位などを基に評価したものだ。

 もちろん、何かに集中することは必ずしも、それを好きか嫌いかを明示しているわけではないが、スーパーボウルのコマーシャルを用いた実験によって、有用な手掛かりが得られた。