【8月21日 AFP】結核は、イタリアの探検家クリストファー・コロンブス(Christopher Columbus)が初めてアメリカ大陸に足を踏み入れる数百年も前に、アザラシやアシカによって同大陸に持ち込まれていた可能性が高いとの研究論文が20日、英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。

 今回の研究は、欧州人が結核を同大陸に持ち込んだとする説に異を唱えるものだ。結核は、百日ぜき、水痘、インフルエンザなどの他の異国の病気とともに、アメリカ先住民数百万人を死亡させたとされている。

 欧州人が到達する前の米大陸には約2000万人の人が住んでいたが、免疫を持たない新たな病気によって、そのうちの最大95%の人々が死滅した。

 だが今回の研究に資金供与した団体の一つ、全米科学財団(National Science FoundationNSF)によると、結核は「欧州からの病気が流入する前に、米大陸の先住民の死に関与した可能性がある」ことが、最新のデータによって明らかになったという。

 ドイツ・テュービンゲン大学(University of Tuebingen)などの国際専門家チームは、ペルーで発見された約1000年前の人骨3体から細菌のDNAを採取・分析し、アザラシやアシカに感染する現在の菌種と近縁種の結核菌種を発見した。

 この発見について論文の執筆者らは「予想外だったとしても、妥当性の高い米大陸への侵入経路」を示しているとし、結核の起源とされるアフリカで宿主動物から感染したアザラシやアシカが、大西洋を横断して南米大陸に到達したことを示唆するものだと述べた。

 論文によると、沿岸地域の人々が、これらの海洋動物から結核に感染し、他の地域の人々へと結核菌を拡散させたと思われるという。

 また、現在知られている種類の結核は、当初考えられていたよりもはるかに起源が新しく、約6000年前にアフリカで発生したと思われることも、今回の分析で判明した。