【8月25日 AFP】再生可能エネルギーを模索する日本人科学者によって開発された「アジサイ」のような太陽電池が、自然エネルギーに新たなイメージをもたらそうとしている。

 東日本大震災の津波による福島第1原子力発電所の事故で深い傷跡が残る日本で、福島県沖で稼働を開始した世界最大級の浮体式洋上風力発電設備「ふくしま未来」に比べれば、アジサイの花にヒントを得たこの太陽電池の発電規模はささやかだ。

 だが、開発者である東京大学(University of Tokyo)先端科学技術研究センター(Research Center for Advanced Science and TechnologyRCAST)の瀬川浩司(Hiroshi Segawa)教授は、最新の技術と花々の美を融合したこの色素増感型太陽電池が、自然エネルギーの利用促進につながるのではないかと期待する。

 白いアジサイの品種にちなんで「アナベル(Annabelle)」と名付けられた太陽電池は、障子をモデルにした格子型の木枠に、太陽電池が花模様のステンドグラス風に組み込まれている。箱は四方20センチほどで、サンルームに置けば素敵なインテリアになりそうだが、スマートフォンを2度充電できるほどの電力を蓄電できる。「葉」の部分で発電し、「花」の部分に蓄電される仕組みだ。また、蓄電すると「花びら」が徐々に青くなり、逆に放電するにつれて白へと、実際のアジサイのように色が変化する。

「エネルギーってあまりいいイメージがないんです。原子力がそうですし、火力は石炭をボンボン焚くイメージで、太陽光発電は面積をとりますし…風力はバードストライクや騒音の問題がありますが、これ(アナベル)だったら環境に何も害がないです」とAFPの取材に瀬川氏は語る。現在、圧倒的に使用されているシリコン製のソーラーパネルにとって代わるとは思わないが、急成長しつつも遊びの少ない再生可能エネルギーの分野に彩りを添えるような「楽しめるエネルギー」が存在する余地があればと考えている。

 政府は太陽光発電産業の促進に取り組んでいるが、特に十分な日射量の確保を筆頭とする天候の問題が普及の妨げとなっている。しかし瀬川氏は「アナベル」ならば室内の照明のような弱い光でも発電できるという。

 さらにデザインの点でも、無限の可能性を秘めている。すでにフランソワ・オランド(Francois Hollande)仏大統領や、コンピューター・グラフィックで作り出されたバーチャル・アイドル「初音ミク(Hatsune Miku)」をかたどった太陽電池を試作している。瀬川氏は「アニメーションのキャラクター、人物の肖像画など、色々なものを太陽電池にすることができます」と話した。(c)AFP