【8月13日AFP】ウクライナ東部ドネツク(Donetsk)の最大の産婦人科病院の地下室で、ラリサさんは、外では激しい砲撃があるなかで前日に生んだ娘を抱いていた。赤ちゃんは毛布にくるまれ、小さなピンク色の帽子だけが見える。

 親ロシア派が支配するドネツク中心部への砲撃が続くなか、数十人の女性がこの地下室に身を寄せ、廊下に置かれた椅子に座っている。多くが妊娠中あるいは新生児を抱えた女性たちだ。

「私は8月7日に、この廊下で出産した」と、ラリサさんは語った。さらにラリサさんの母親は「地下室で出産することになるなんて、信じられない」、「なぜこんな目にあわなければならないの?死を待っているの?誰も私たちの声を聞いてくれない」と語った。

 この地下室は医療用具などの消毒のために使われていた。だが「戦闘が続き、臨時の手術室として使うようになった」と、病院の副院長は言う。

 砲撃があると地下室に逃げ込まなければいけない患者たちは感情的になり、怒りも募らせている。

 10日朝の砲撃では病院の窓は吹き飛ばされ、複数の病室の壁に金属片が突き刺さった。

「私たちは(親ロシアの)分離独立派のための産婦人科にいる」と、麻酔医が冗談を言うと、副院長は「私たちは医師であり、どっちの見方でもない。私たちは平和のためにいる」と付け加えた。

 ドネツクの奪還を宣言したウクライナ政府軍は攻勢を強めており、ドネツク中心部は激しい砲撃にさらされている。(c)AFP/Anna MALPAS